検索窓
今日:3 hit、昨日:7 hit、合計:84,018 hit

consult.40 ページ41






「でも、Aちゃんの方は覚えてねぇよ。
オレが声かけたら泣きそうな顔で逃げられちまってな」









三ツ谷くんに声をかけられたアイツが、
泣きそうな顔で逃げ、た……









 









『ち、千冬ぅぅぅ……』


『!な、何で泣いてんだよ、オマエ…』









 









その時ふと、小学校の頃に
泣きそうな顔でオレのところに走ってきた
Aの姿が頭に映った。









「あの時の子がAちゃんだって
確信を持ったのは、つい最近の話だけどな」









 














 




そう。確信を持ったのは本当に最近。

彼女を初めて見たあの時は、
名前も知らなかったのだから_____









「だめ!!おじさん」









あれは、三ツ谷が中一の頃。学校からの帰り道。

大通りから少し離れた道で、1人の幼い声が上がる。

その声が聞こえた三ツ谷は
引かれるように声の方に足を動かしていた。


そして、人気のないその道に
成人の男と、小さな少女を背中に庇うように
小学生くらいの女が立っているのが見えた。









「おじさん、悪い事する顔してる」




「…悪い事する顔って何かな?
何なら、君も一緒に来る?
いいよ。欲しいもの買ってあげる」









会話の内容から、男の方は単純に誘拐犯に見える。


少女が連れ去られかけようとしたその時、
あの小学生が割り込んだ、と言った所だろう。


……でもあの子供、









「欲しいものなんてない!
だから早くおじさんはどっか行ってよ」




「っ、いいから来いって言ってんだよ」









あの小学生は、間違いなく怯えている。


手は拳を作ってプルプルと震えていて、
張り上げている声も僅かに震えていた。


男の方は逆上して今にもマズイのが分かる。


三ツ谷が止めていた足を再び動かそうとした時、









 




パチリ









 




ふと、その子と目が合った。


男の方は三ツ谷の方に背中を向けているから気付かない。


けれど、その少女とは確実に目が合った。


そして、どうしてか睨まれた。









「(……なんで?)」









困惑するのも束の間。


少女はすぐに三ツ谷からも視線を逸らした。


そして、また別の方向に顔を向けると









「あー!」









突然声を出して、その方向を指をさした。


"あ?"と男はそちらに顔を向けるが、
その方向には何もないし誰もいない。


次に男が少女へ顔を戻した時には、
そこに彼女はいなかった。









「っ、は?オイ!待て!!」









小学生の彼女は、後ろにいた子供を連れて
遠くへと逃げるように走って行っていた。


遅れてそれに気付いた男が
後を追おうとした時、今度は三ツ谷が声をかけた









「誘拐は犯罪だよ。おっさん」




「……見てたのかよ。中坊が」









足を止めた男が舌打ちをしながら三ツ谷を睨みつける。









「それよりここにいていいの?
オレ、さっき通報したから。この辺りに警察くるけど」




「っ…ちっ」









ま、嘘だけど。




案の定、男は逃げるように走って行った。


それを確認した三ツ谷は
少女達が走って行った方角へ
無意識に足を動かしていた。

consult.41→←consult.39



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (82 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
314人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:結祈華 | 作成日時:2023年2月11日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。