77.助けられてる ページ27
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そのような内容はある程度
本人からではないが聞いていた。
彼女の過去は簡単に語れるものではないと、
分かっていた筈なのに。
目の前で語る彼女の顔は明るく装っているが
思った以上に辛そうなものだった。
「逃げる事だけ考えてたから、周りなんて見たなくて。
気付いたら、道路に飛び出して…
気付いたら車が迫ってて……その時、助けられた」
あの虎杖くんに。
今でも鮮明に覚えてる。
助けられたあの時の光景も自分が感じた気持ちも。
虎杖に自分の正体が猫である事を
言って欲しくなかった様子のAに
伏黒は少しだけ納得した。顔見知りであり、
助けられた相手なのだから気まずいのかもしれない。
"そうか"とそれだけしか伏黒の口からは出なかった。
そこに至るまでの話が暗くて、
それに向ける言葉が無かったから。
向けていた視線を下に落とした伏黒に気付き、
Aは同情してくれているのかと少しだけ笑った。
「キミはこんな時にまで私に気を使うんだね」
「…何でオマエは無理して笑ってんだよ」
「無理してって訳じゃないけど…
昔の事はやり直せる訳じゃないし、
私にとって大事なのは今だから」
_____今の私は、恵に助けられてるんだよ。
優しく笑ってそう言ったA。
"ただ、お前が死ぬべき人間じゃないって…
そう思っただけだ"
以前言われた伏黒の言葉がAの頭に蘇る。
人だと言ってくれた、
死ぬべきじゃないと言ってくれた。
欲しい言葉をくれた伏黒は確実に
今のAを作っていた。
ほんの少しだけ小っ恥ずかしくなり、
目を逸らせばそれを追ってくるA。
少なくとも、先程よりも
今のように笑っている方が良いと伏黒は思った。
「…何でもいいが、
助けられたって言うならもっと自分を大事にしろよ」
「え?」
「1人で突っ込むな。
何かとオマエは、自分が囮になろうとしてるだろ」
「それは適任だと思ったからなんだけどな…」
少しも自分は悪くないと思っているAに
伏黒はため息が出る。
普通の術師でも、危険な場面で
自分が率先して動くと判断できる者は多くはない。
不要なものは除外し、咄嗟の判断が出来る点については
褒めるべきだがもう少し体を大事にして欲しいと
伏黒は思っていた。
それは多分、自分以外にもきっといる。
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結祈華(プロフ) - カノンさん» 好きと仰って下さりありがとうございます!嬉しすぎました!これからも頑張らせて頂きます。 (2023年1月27日 23時) (レス) id: 074ff9457b (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - いえ!修正ありがとうございます!とっても好きなのでこれからも頑張ってください! (2023年1月27日 17時) (レス) @page31 id: 3fc6711829 (このIDを非表示/違反報告)
結祈華(プロフ) - カノンさん» カノン様。そうですね…間違えておりました。9ページの方を訂正させて頂きます。コメント及びご指摘頂きましてありがとうございました。 (2023年1月27日 11時) (レス) id: 074ff9457b (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - コメント失礼します。アニメ第1話部分で亡くなったのは、おそらく虎杖悠仁の祖父だと思うのですが… (2023年1月27日 11時) (レス) @page30 id: 3fc6711829 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:結祈華 | 作成日時:2022年12月31日 20時