邪神の館【wrwrd】 (ページ1)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:419 hit

1 ページ1

薄暗い屋敷のロビー…中央に伸びる階段を人影がコツコツと足音を立てて登っていく。

人影は階段を登り切り、廊下を歩いていく。
そして、１つの扉の前でピタリと足を止めた。
この人影…基女の名前はA。この屋敷唯一のメイドであり……人間である。

コンコン…と扉を叩く。返事はない。
2回目。先ほどよりも少し強く扉を叩く。返事はない。
3回目。ドンドンドン！！！激しく扉を叩く。返事はない。

痺れを切らしドアを乱暴に開け放った。

『鬱起きろッ！！朝だわボケェ！』

部屋に入って怒鳴り散らせば部屋の右側にあるベッド中央に鎮座する膨らみがビクリと体を震わせた。

その膨らみを一瞥してからカーテンをシャッ！！と開けると朝日が差し込む。薄暗い部屋が明るくなったのを確認して毛布をバサリと剥ぎ取った。

中から出てきたのは成人男性。深海色の髪と瞳をした少し陰鬱そうな青年の様な見た目をしているが彼はれっきとした邪神である。

アイホートという神をご存知だろうか。

女性男性関係なくは.らませてくる邪神。正確には雛を契約者の体内に埋め込む。やがて契約者の腹を突き破り群れをなして出てくる…そんな邪神である。

彼はそれだ。名前を鬱。大先生とか鬱先生とか言われている。

『おはようございます鬱様。朝です。起きてください。もう皆様集まっております。』

ut「……まだ眠いわ。」

そう言って体を縮こませる彼に小さな棚の上に置いてあったメガネを投げつける。
そのままフンと鼻を鳴らして扉に向かいドアノブに手を掛けた……そんな時。

ut「待ってや…僕と一つになろ？」

そう言って私の手の上からドアノブを押さえつけられる。柔らかく扉に体を押し付けられ身動きが取れない。

あろうことかコイツは人の太腿にスルリと手を滑らせてーーー……刹那扉が吹き飛んだ。

「大先生朝から楽しそうやーん！それなんてエロゲ！？」

吹き飛んだ扉をひょいと避け鬱から距離を取る。
あのクソアイホートが。と小さく悪態をついたが多分聞こえていない。

緑のパーカーを被った乱入者は鬱の胸ぐらを掴み引きずって部屋を出た。
彼の情けない叫び声が廊下に響いた。

『……扉、どうするんですか。』

残されたのは私と、綺麗に吹き飛んだ扉だけだった。