マリアに、懺悔。【1】 (ページ25)

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とっくに20時は過ぎていた。

『…待ってたぜ、ヒーロー』

『稀咲の野郎は高みの見物か』

『そーゆー奴さ』

『天竺を潰さねーと、アイツにはたどり着けねえってことだな…
とことん汚ねえ野郎だぜ』

─────エマちゃんが死んだ。

言わずもがな、マイキーくんもドラケンくんも戦意喪失。抜け殻だ。とても今じゃ、こいつらと戦おう、なんて心の余裕は彼らには無い。

…俺は誰のためにこんなタイムリープをしてる？
ヒナのためだ。

人間ってのは不思議なもんで、大切な人のためなら自分の命をなげうってでも、救いたい。なんて、そう思ってしまうらしい。

自分でも信じられない。こんな都合のいいタイムリープで、漫画みたいなヒーローになってる事が。

ふつうなら、できない。

ドラケンくんや、マイキーくんには、過去に戻ってエマちゃんを救う、なんてことはできないんだ。

俺みたいに、必ずまた救ってみせる、で割り切れたりなんかできないんだ。

病院の外で、マイキーくんを力いっぱい殴るドラケンくんの目が忘れられない。

何を言うわけでもなく、それを静かに受け止めるマイキーくんの目が、頭から離れない。

最期のエマちゃんの笑顔が、瞼の裏にこびり付いて剥がれない。

みんなを守るために作った東卍。

パーちんくんも一虎くんも捕まって、場地くんは死んだ。
関係ない、エマちゃんまで巻き込んだ。
このままじゃ、藤宮まなかだって、死んでしまう。

失意のドン底で、差し伸べてくれる手も掴めずに。

だから、マイキーくんはひとり堕ちていくことしか出来なかった。

だからこそ、俺はやるしかない。

隣には千冬だっている。
2人で心中だな。
そう言ってくれた千冬を俺は裏切りたくない。

目の前に広がる、赤い特服を着た、天竺の連中。

あの日、なんの迷いもなく俺に銃口を向けた黒川イザナの絶対零度のような視線。彼と対峙した時に、それを思い出した。

もちろん怖いよ。今にも膝が大笑いしだしそうだ。

『天竺400人に対して東卍は50人。しかも、総長と副総長の2人は不在。多勢に無勢ってヤツだな。……楽しませてくれよ東卍』

黒川イザナが楽しそうに笑う。

でも。やるしか、ないんだ。

藤宮まなかを、ヒナを、マイキーくんを救うためにも、ここでしっぽ巻いて逃げ出すことは許されない。

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