マリアに、懺悔。【1】 (ページ24)

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…遊び疲れるなんて感覚はいつぶりだろうか。

私はシンイチローくんの背中にぴったり張り付きながら、うつらうつらとしていた。

『げ、マナカ。寝んなよ、事故りそうで怖ぇー』
『うん、だいじょーぶ、ねない、ねない』
『声が寝そーだぞ』
『…イザナくん、いーこだね』
『だろ？』
『わたし、すきだよ』
『えっ』
『違う。シンイチローくんとは好きのベクトルが違う』
『へーへー、さいですか』
『少し嬉しそうだね』
『うるせー』

…イザナくんと別れる直前。
彼は私の手首を掴んで、一言。

『まなか、またくる？』

シンイチローくんは隣で満足気に笑ってた。

『うん。約束』

わたしは彼と視線を合わせるようにしゃがんで、そっと小指を絡めた。

『次は、イザナくんが私にあいにきてね』

『うん』

……はっと意識が浮上した。
当たりを見渡す。簡素で冷たい部屋の中。

夢だ。昔の夢。

シンイチローくんは生きてて、イザナくんも素直でひと一倍可愛かった頃の夢。本当はもっと夢の続きを見たいけど、本当ははまだ微睡んでいたいけど、そうはいかない。

時計を見た。もうすぐで20時になる。
鶴蝶くんと約束した時間は過ぎてしまうかもしれないけど、急いで出れば間に合うだろう。

ほんの昼寝のつもりが、まさか時間まで寝こけることになるとは。

慌てて着替えて靴を履く。アジトの中は、がらんどう。

いつかイザナくんに持たされた匕首は、大切に服の中へ忍ばせた。

今夜、使うことがありませんように。

2月の22日。20時26分。

私は真っ直ぐ、横浜第7埠頭まで急いだ。

久しぶりだ。こんなに走るのは。
息がすぐに切れる。苦しい。
似てる。あの時遊び疲れた感覚に、似てる。

スタミナ足りてねえなぁ、マナカは

耳の奥で、シンイチローくんにそんなことを言われた気がした。
足が竦む。怖い。

『……シンイチローくん、わたし、ほんとは怖いよ』

ゆっくりと減速していく自分の両脚。

自分の中に私がふたりいる。

今ならイザナくんから逃げれる。
駄目だよイザナくんを助けないと。

ぶるぶると笑い出す自分の膝を叩いてみる。本番前ですら、こんなに足が震えることなんて無いのに。

にげちゃえ
助けなきゃ

『う、』

怖い。こわい。こわい。
イザナくんがこわい。
なんでわたしが。

ぐるぐる。胃の中の物がせり上がってくる。

もう、私しか、イザナくんを救えない？

にげたい。ほんとは。

私ごときにいったい何が変えられるっていうの。

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