マリアに、懺悔。【1】 (ページ23)

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『紹介するな。俺のヨメの、』
『藤宮まなかです。はじめまして、イザナくん』

差し出した手をおずおずと握り締めたイザナくんは少しだけ照れくさそうにそっぽを向いた。

それが、君と初めてあったときのはなし。

『────シンイチローくん、連れていきたいところって？』
『おれの弟にお前を紹介したくてさ』
『万ちゃん？』
『ちげーよ、もうひとりいんの』
『そうなの？』

彼にしがみつきながら、風を切る。
もうひとり弟がいたなんて、わたし知らなかった。

シンイチローくんがバイクを止めたのは、とある施設の前だった。そして、シンイチローくんがエンジンを止めた途端に意気揚々と飛び出してきたのがイザナくん。

シンイチローくんに飛びついて、あんなことがあった、こんなことがあったと報告しているうちに私の存在に気が付くと、じいっと観察するように見回して、それから『誰だ』と言わんばかりにシンイチローくんを見あげた。

…第一印象は綺麗な子。褐色の肌に柔らかそうなシルバーの髪の毛と、素直そうな大きな瞳。
私は、一目見てシンイチローくんの、2人目の弟を気に入った。

『シンイチローくん、イザナくんに変なこと教えてない？』
『バイクの乗り方とか、不良の遊びかt』
『あーっ！イザナくんにはまだ危ないからだめえ！』
『えーっ！？なんで！？』
『なんでってなんで！…イザナくん、シンイチローくんの言ってる遊びはまだしちゃダメだよ。危ないから』

年相応の遊びってなんだろう？

私はイザナくんの肩に手を当てながら、じっと考える。彼の大きな瞳にそんな私の顔が反射していた。

『女の子とは、訳が違うもんね』
『イザナぁ、マナカは花女に通ってんだぞ〜』
『はなじょ？』
『花園女子！この辺じゃ有名なオジョーサマ校！』
『ふーん。真一郎より頭良い？』
『俺と比べるのが申し訳なるくらい頭良い……』
『シンイチローくん……』

イザナくんはけらけらと楽しそうに笑った。

その日は何をする訳でもなくこんなふうにお話して、少し飽きたらイザナくんに施設の中を案内してもらって、それにも飽きたら鬼ごっこなんかして。

『久しぶりにこんな走った、かも…』
『スタミナ足りてねえなぁマナカは』

こっち、こっち！と鬼の私を煽るイザナくんの体力は無限大。
私はすぐ隣に立っていたシンイチローくんに、

『たっち』
『え？』
『鬼返しなし。次はシンイチローくんが鬼だよー！』

イザナぁ！と駆け出す背中を見送って、私は蛇口を捻った。