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『…オイオイオイ、橘ナオトは俺が殺すはずだろー?稀咲い』

『すまねえイザナ、コイツがタケミっちを庇った』
 
稀咲の口からイザナ、とたしかにそう言った。
慌てて顔を上げる。褐色の肌に、色素の薄い髪、紫の瞳。

ああコイツが、黒川イザナ。
 
『お前らは俺のマイキーを殺した。…鶴蝶ー。花垣を、殺せ』

『はい。』
 
迷いの無い、瞳が俺を捉えた。確かに目が合った。

でも、カクちゃんは躊躇なく引き金に指をかけて、
 
 



どん。
 
 



『おー、ご苦労ー』

『…あっけねえモンだな』

 
口の中が血まみれで上手く息を吸えない。溺れている気分だ。

痛い。
撃たれた、撃たれた!!

クソ、クソっ!…なのに、対して思考は冷静そのもので、怖いくらいに言葉が浮かんでくる。
 
『ナオト、すまねえ』

『タケミチ君…君を現代で初めて見たとき…絶望しました』

『…え?』

『こんな…こんな、情けなさそうなやつに、全て託さないといけないのかって…こんな奴のどこに、姉さんは惚れたのか…不思議でした。

でも、何度も失敗する君を見ていて、今はこう思う。

ヒーローってこういう人なんだって。

タケミチ君。君は、僕の誇りです』
 

じわりと涙が溢れた。痛みからじゃない。

ナオトが差し出した手を握る、その前に呟く。
 

『ナオト…おれ、藤宮まなかを救う。

何かしらの形でマイキー君に繋がってるなら尚更…。

最後になんて…最後になんかさせねえから。』

 
ぴくり、と肩を揺らした黒川イザナがゆっくりとこっちを向いて、俺たちを絶対零度の視線で射抜く。
 
『…お前みたいなやつが、マナカの名前を気安く呼ぶな。
死に足りねえなら、殺してやるよ』

ぎりっと歯を鳴らして、拳銃を構える黒川イザナ。

 
『…ぜったいに、救ってみせる、』

『タケミチくん。最後の、握手です。』
 

俺は黒川が引き金を引くより早く、ナオトの手をしっかりと握り返した。

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作者名:亜秀 | 作成日時:2022年2月6日 20時

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