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真一郎は俺に気が付くと、いつものようにからっと笑って、『おう!久しぶりだな、イザナ』と片手を上げた。
『イザナ?イザナくん?わ、久しぶり。わたしのこと、覚えてる?』
『ウン。マナカでしょ』
『そう、まなか。覚えててくれて良かったあ』
乾と話していたであろうマナカは、くるりと身体をこちらに向けて嬉しそうに両の手を振り返してきた。
乾はそんなふたりと俺を不思議そうにぼんやりと眺めていたのを何となく覚えている。
『真一郎、良かったな』
『なにが?』
『まだマナカに捨てられてなくて』
『おぉ!?イザナも言うようになったな!?このやろ、』
『シンイチローくん、大人気ない』
『マナカ振り回し過ぎて、さっさと見放されてると思ってた』
『俺、そんな振り回してるか?』
『あはは、シンイチローくんそんな不安そうな顔で見ないでよ』
マナカはくすくすと肩を震わせると、『嫌だったらずっと一緒にいたりしないよ。イザナくんもシンイチローくんいじめないであげて』と付け加えた。
『…ま、まなか〜!』
『あっ、オイルでべたべたの手で頭撫でないでってばあ』
頭を撫でようとした真一郎のエンジンオイルまみれの手は、ありえない速度で反応したマナカにさっと交わされる。
わあわあと店の中を走り回る年上2人。
ほんのすこしだけ、そんなふたりが羨ましかった。それがなぜだったのかは、今になってもよく分からないままでいる。
『っと、それよりイザナくん、今日はどうしたの?』
真一郎から、ひらりひらりと蝶みたく軽やかに逃げ回るマナカは余裕そうに俺にそう尋ねてきた。
『あー、真一郎に言いたいことがあってさ』
『俺に?』
『そ。ケツ乗ってよ、ちょっと走ろ?』
親指でくいっと、店の外に止めたバイクを指すと、
『おう、いーね。ちょっと待ってろ』
にかっと笑った真一郎は手袋を外しながらそう返した。それから、そんな俺らを見つめるマナカと乾に視線をやる。
『ふたりとも行ってらっしゃい、青宗くんとここで待ってるね』
乾の肩に手を置き、留守番は任せてと言わんばかりに親指を立てる。
『おう!頼んだ』
『イザナくんも、気を付けてね』
『ン』
店に取り残した2人が一体どんな話をしながら俺たちを待っているのか少し気になるところではある。が、そんなことが話したいんじゃない。
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作者名:亜秀 | 作成日時:2022年2月6日 20時