54* ページ10
「じゃあ、オレもそろそろ帰るかな」
『もう帰るの?』
「もうすぐ日が落ちるやろ」
『あぁ……』
「また来るから、今日はおやすみ」
『うん、いつもありがとう。おやすみロボロ』
日が落ちると同時に目蓋が重くなり、手を振っているロボロが見えなくなる。ふわふわと眠る私は、また日の出と共に目を覚ます。
「うわーーー!」
!?
今、川原の方で叫び声がした!?急いで飛んでいくと、そこには。
『ひとらん……?』
「わっ!ああAか、良かった」
『どうしたの?熊とか出た?』
「熊よりもっとやばいやつ……あそこ、あそこにいる!」
川原で尻餅をつくひとらんが、森の茂みを指差して震えていた。熊よりもやばいやつ?そんなのいたっけ?
私も警戒しながら茂みに近づく。ん?何もいない?風で飛ばされた葉っぱやツタが絡んで木に引っ掛かっているだけ。
『……?』
「え?」
『何もいないよ?』
「え……う、うそだ〜!」
そのまま後ろに倒れてジタバタするひとらん。きっと葉っぱやツタをおばけと見間違えたんだろう。
『ひとらん、もしかして幽霊怖いの?』
「……怖くはない」
『でもさっきの悲鳴はすごかったよ』
「びっくりしただけ」
『私も幽霊だけど怖い?』
「Aは怖くない!全く!」
『ふふ、よかった』
良く見ると、転んだのか膝を擦りむいて血が出ていた。とても痛そうだ、これじゃ山を下るのも大変だろう。
『小枝を拾っていたの?』
「そう、村で使うから頼まれて。でも持って帰れなくなっちゃった」
『よし、じゃあ私が持つよ!』
「え?」
『ほら、背中に乗って?おんぶして山の入り口まで連れていくよ』
「いや、いいよ大丈夫!」
『よくない』
「ほんとに、大丈夫!女の子におんぶされるなんて……俺男だし」
『女の子扱いしてくれるのは嬉しいけど、私空飛べちゃうから』
無理やりおんぶする体勢になると、しぶしぶ腕を回してくれるひとらん。小枝が入ってる籠ごとひとらんをおんぶして、ゆっくりと下山する。人に会わないようにゆっくりと慎重に。
山の入り口でそっとひとらんを下ろし、手を振って誰にも見られないうちに社へ帰る。
久しぶりにひとらんに会えた、ゆっくりおしゃべり出来た。またみんな来てくれるようにならないかな。
変化するみんなとは対照的に、私は何も変われなかった。みんなと遊んでいたあの頃のまま。
変わらない、変わりたくない。でも変わらないものなんてない。
。
104人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ベルギーチョコ(プロフ) - ティッシュ一箱使い切るまで泣いてました。今までで一番泣いたと思います。本当に素晴らしい作品をありがとうございました (2021年12月13日 4時) (レス) @page30 id: a8b18d6813 (このIDを非表示/違反報告)
えみ(プロフ) - 今まで読んだ作品の中で一番綺麗な世界観と文章でした。もっと早く出会いたかった…こんなに素敵な作品をありがとうございます。 (2021年6月17日 19時) (レス) id: 325d54ee5c (このIDを非表示/違反報告)
人妻すここ(プロフ) - bloomさん» はじめまして、最後まで読んでいただけて嬉しいです。そう言っていただけて、同じ文字書きとしてとても嬉しいです、こちらこそコメントありがとうございました! (2021年3月26日 5時) (レス) id: 89365ba13c (このIDを非表示/違反報告)
bloom(プロフ) - 素敵な作品に出会えました。この作品に感化されて私も話を書いてみようと思えました。ありがとうございます! (2021年3月26日 0時) (レス) id: 8bbe5d5c73 (このIDを非表示/違反報告)
人妻すここ(プロフ) - あるかさん» コメントありがとうございます!確かに少なめですね、見つけていただいてありがとうございます。後書きまで読んでいただけたのでしょうか、感謝です。幸せなラストだと仰っていただけて嬉しいです、これからも頑張ります! (2020年3月30日 16時) (レス) id: 89365ba13c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:すこ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home
作成日時:2020年2月2日 8時