叩き斬る 土方side ページ9
無精髭に蹴りつけられた男は地面にうつ伏せで倒れ込み、痛みを訴えるように顔を歪めた。顔には土がつき、腹から空気が抜けていくような「げほっ」という苦しそうな声を漏らす。そこにまた無精髭は足を突き落として蹴る。もう一人の男はそれをあわあわとしながら傍観している。
男「おらさっさと行け!!あの化け物をどうにかするんだよ!!」
男「そんなっ…無茶でっ…ガハッ…!!」
顔色を変えて目を充血させて無精髭はガンガンと容赦なく足をその男の背中に落としていく。そのたびに聞こえてくる痛々しい声があまりに悲痛で、俺達は眉を寄せる。近藤さんは拳を握りしめている。総悟は舌打ちをひとつ溢した。
…連中が伝説の攘夷志士相手に血眼になって無謀な戦いをしていたのは、これが理由なのだろうとすぐに理解した。無精髭の男は恐らく、誰のことも仲間だとは思っていないだろう。人の命にも毛ほども興味がない。
男にはなにかしらの力があって、周囲の奴等をひれ伏せさせていた。だから連中は無精髭の男に逆らえない。それをいいことに無精髭は、仲間を……自分が集めた捨て駒を見捨て、自分だけが生き残ろうとしている。本当に、腐りきった奴なのだろう。
男「早くしろ!!じゃねーとテメーの首を今ここで叩き斬るぞ!!」
男「ヒッ…!!」
…無精髭は左腰にあった刀を震える手で引き抜くと、めちゃくちゃな剣筋でそれを蹴りつけた男に振り落とそうとする。男は死を悟り、悲鳴を漏らしながらに目を瞑る。
近「ッ……クッソオオオ!!」
土「!…待て近藤さん!!」
それを見ていた近藤さんがその場から飛び出していこうとする。近藤さんが駆け出す瞬間と、男が銀色を振り上げたのはほぼ同時で。
…そこに、瞬く間に現れた影。
「…その前に、私がアンタを叩き斬るけれどね」
…そんな、静かな声がその場に響いた瞬間には、無精髭の男は声にならない声をあげ、背中からは赤色を噴き出していた。そのまま、バタンッと勢いよく倒れていった。Aが残りの浪士をかたずけ、背後に回っていたのだ。俺達も気づかないうちに。いや、先程のいざこざがあったからこそ、Aに注意が向かなかったのかもしれない。
男「…ッ、な…」
男「ま、舞、姫…!?」
何故、とでも言いたげな男二人の顔。Aは銀色についた赤色をまた払いながら、「…早く行けば」と。
「私は別にアンタらを助けた訳じゃないから、そこらへんは勘違いしないように。それと…」
そう言うとAは、その目に溢れんばかりの殺意を込めたような目をして、ソイツらを睨みつける。
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樹里(茉莉華) - マジでこれ泣けましたっ!! 沖田隊長もいいですけど、士方さんのまっすぐなものもいいですね! ピピコさんの作品はどれも大好きです!応援してます!! (2018年9月10日 16時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 天音さん» 語彙力がなくなるほどに、ですか…!嬉しいです^^私自身も楽しんで書いてます!!次の巻では大きくお話が動き出しますので、そちらでも楽しんで頂けたら幸いです!!天音さんの癒しになれますように!! (2017年9月21日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
天音(プロフ) - なんかもう面白すぎてなんて表現したら良いか分からなくなって来ましたwww (2017年9月21日 17時) (レス) id: c47ef2ab15 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» あの人達が出て参りましたねぇ…!!どうなることやら、フッフッフッ……。更新バリバリ頑張りますっ!! (2017年9月19日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ぬおおっ! き、鬼兵隊キタ…ッ! 高杉との絡みがあることを祈りつつ更新楽しみにさせていただきます! (2017年9月19日 20時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年8月25日 14時