お見通し 土方side ページ46
「つまりお前は何が言いたいんだ」と、俺はそんな質問をソイツに問いかけ、視線をやる。Aのことをもう少し評価してやれだとか、そういう話をするために俺を呼んだ訳ではないだろうことは明白だ。すると総悟は一呼吸置いてから、口を開いて答える。
沖「……最近、Aさんへの態度、ちとよそよそしくないですかィ」
……と、確信を持ったような確かな声で、そう言った。俺はそれに、何か言葉を返すことが出来ないまま、ただだんまりを決め込みつつ歩を進めていく。眉が少しばかりピクリと動いてしまったのは、致し方がないとしてほしい。
沖「……俺が気づかないとでも?俺ァアンタの命を狙うべく、観察してることを忘れちゃならねェや」
土「……そうか、以後、気を付けることにする」
『ー・・貴方に会えて、よかったです』
…脳裏をまたよぎるのは、Aのそんな言葉と、Aのその声と、表情だった。月明かりだけがぼんやりと、淡くその場を照らしていて、その光は幻想的に、Aに降り注がれていた。長い髪は秋を感じる夜風に揺れて、鈴虫の鳴き声が、周囲には満ちていて。
……そんな中、Aは俺にそう告げた。嘘偽りなんて感じない、真っ直ぐな目で、真っ直ぐな言葉を。
沖「……土方さん、アンタのことはすべてお見通しです」
土「怖えェ言い方すんじゃねーよ」
……なんだかんだ、何かと勘がいいコイツには、どうやら筒抜けらしい。溜め息を漏らしては、目を伏せる。
……あの時俺は、もう誤魔化しが効かないくらいに、もう引き返せないくらいに、アイツに強く惹き込まれてしまった。いつか、ずっと昔に抱き、とっくに捨て去ったと思っていた、その感情を、あろうことか思い出してしまった訳で。
……つまるところ、惚れた。
総悟が言うことも、その通りなのだ。あんな冷たい言い方をすることはなかった。それに、するつもりはなかった。だが、思っていない言葉がどうしたって、意識しないうちに口から溢れていく。まだ、戸惑っているのだ。自分自身の気持ちに。だがそれは、アイツを傷つける理由にはならない。
沖「……ま、アンタらがどう転ぼうと俺はどの道せせら笑いやすけど」
土「悪趣味だな」
沖「けど、」
一応忠告はしときやす、と。ソイツは俺の数歩先を歩いていって、背中を向けたままに続けた。
沖「……前みてェなことはもう、やめにしてくだせェよ」
言うべきことは言っておけ、と。そういう解釈で、いいのだろうか。
土「……あぁ」
…そうだな、と。そんな曖昧な言葉は、ソイツに聞こえたのか否か。
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樹里(茉莉華) - マジでこれ泣けましたっ!! 沖田隊長もいいですけど、士方さんのまっすぐなものもいいですね! ピピコさんの作品はどれも大好きです!応援してます!! (2018年9月10日 16時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 天音さん» 語彙力がなくなるほどに、ですか…!嬉しいです^^私自身も楽しんで書いてます!!次の巻では大きくお話が動き出しますので、そちらでも楽しんで頂けたら幸いです!!天音さんの癒しになれますように!! (2017年9月21日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
天音(プロフ) - なんかもう面白すぎてなんて表現したら良いか分からなくなって来ましたwww (2017年9月21日 17時) (レス) id: c47ef2ab15 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» あの人達が出て参りましたねぇ…!!どうなることやら、フッフッフッ……。更新バリバリ頑張りますっ!! (2017年9月19日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ぬおおっ! き、鬼兵隊キタ…ッ! 高杉との絡みがあることを祈りつつ更新楽しみにさせていただきます! (2017年9月19日 20時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年8月25日 14時