【銀魂】己の行く道 真の居場所【土方十四郎】

慈悲と優しさ　土方side ページ45

沖「……ま、モノマねはまた鍛えるとして」

土「やらんでよし」


そんなことよりもお前は取り敢えず仕事をしてくれと言いたい。お前が溜めに溜めた仕事は俺と同時にAにまで回ってくる。そんなの堪ったもんじゃねぇ。ただでさえ今でもてんやわんやだっつーのに。そんな感情を現すように湿度の高い視線を送りつけてやるのだが、ソイツには通用せず。


沖「……Aさん、実際最近結構無茶してやせんか」

土「……、」


……と、総悟は俺に視線をやらないまま、何処か遠く……とはいえ廊下の先の方を見据えながらにそう口にした。

……それには確かに、同意だった。


最近のAの活躍は、世辞ではなく本当に目まぐるしい。今月だけでもう6人もの犯罪者を取り抑えている。万引き犯やひったくり、強盗、それに攘夷志士の確保など。

それを少しの間に一気に捕縛するなど、中々出来ることではない。紅の舞姫の成せる技、のようなものなのだろうか。それ以前にも、攘夷志士の大量検挙に、ソイツは深く関わっている。その上、殆どを生かしたまま。


土「…そうだな」


アイツはそういうことを毛ほども顔に出さないが、最近のアイツは、少し疲れているように、見えなくもなかった。


沖「なのに、あんな言い方しちゃって」


『調子に乗るなよ』
『こんくらい働いて当然だ』


ちっと可哀想ですよ、と。総悟は言う。その言葉に少しの驚きを含んだ目線を送る。


土「……お前に他人を労る気持ちがあったのか」

沖「失礼ですぜ、アンタ。俺だってそのくらい思いやす。土方さんに関しては皆無ですが」

土「だろうな」


もし俺にそんな労りがあったのだとしたら、朝からバズーカを放たれることなんてないだろう。分かりきったことである。


沖「……なんだってそんな言い方するんですかィ、アンタ」

土「……つか、つまりお前は何が言いてぇんだ」


…まさかコイツが、本気で他人のことを心配し、俺にこんなことを言っているとは、コイツの性格を知っている奴等は思わないだろう。実際、今のコイツの顔を見てみれば、慈悲に満ちたような表情や、優しげな気配は……ない。寧ろ、口元をニタリと吊り上げ、「面白いもん見ーつけた」と言い出しそうな面をしている。


……その面から、どうやって慈悲と優しさを見つけ出せばいいというのか、分かる奴はどうか俺に教えてくれ。

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