誤魔化せない 土方side ページ32
土「……なんだよ突然」
「部下からの素直なお言葉ですよ」
土「自分で『お』をつけるなよ」
……そんな会話をなんとか紡いでいくも、感じる違和感は、全身を包み込むような熱は、なくならないままで。
土「……じゃ、そろそろ寝る」
「えぇ」
……その場から立ち上がり、俺はAに背を向ける。まかりまちがって、顔がまずいことになっていたとしたら、見られたくはない。だが、後ろからは「土方さん、」と俺を呼ぶ声がかかり、俺は渋々顔を少しそちらに向ける。夜で、暗いのが救いだった。
土「なんだよ」
「おやすみなさい」
俺を見上げては、そんな言葉を発した。口元は綻んだままで。そんな表情ですら、今はなんでか胸が締め付けられてしまう。
土「……あぁ、おやすみ」
無意識に早口になり、俺はそう言うと逃げるようにその場から立ち去る。静かな廊下には、俺の足音と、未だに鳴り響く心臓の音が響いている。心臓の音は周囲に聞こえていないことを願う。
土「……チッ……なんだよコレ…」
……早足で自室に向かいながら、何処から来るのかよく分からない苛立ちを声にする。だが、そうは言っても俺は、この感覚を知っている。この感情を知っている。
……なんだって、こんなことになるんだか。
土「……、」
……自室に入り、襖を閉めると、俺はそこに背中を預けた。なんだか酷く疲れていた。けれど、それでも眠れる気があまりしなかった。
『……貴方に会えて、よかったです』
土「……なんだよアイツ」
……自分の目元を手で覆う。何も見えない暗闇が広がる。少し心地いい。だが、余計に心臓の音が際立って聞こえてきてしまう。
……文句のつけようがないほどに、綺麗に笑ったソイツが、暫くは頭から離れそうにない。俺は何かを諦めるように、溜め息を吐いた。
土「……冗談だろ」
……自分に言い聞かせるように呟いてはみたものの。
……もう誤魔化せないのは、自分でも分かっていた。
『……好きな人から、貰ったものなんです』
……そんなん、報われなさすぎるだろう。
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樹里(茉莉華) - マジでこれ泣けましたっ!! 沖田隊長もいいですけど、士方さんのまっすぐなものもいいですね! ピピコさんの作品はどれも大好きです!応援してます!! (2018年9月10日 16時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 天音さん» 語彙力がなくなるほどに、ですか…!嬉しいです^^私自身も楽しんで書いてます!!次の巻では大きくお話が動き出しますので、そちらでも楽しんで頂けたら幸いです!!天音さんの癒しになれますように!! (2017年9月21日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
天音(プロフ) - なんかもう面白すぎてなんて表現したら良いか分からなくなって来ましたwww (2017年9月21日 17時) (レス) id: c47ef2ab15 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» あの人達が出て参りましたねぇ…!!どうなることやら、フッフッフッ……。更新バリバリ頑張りますっ!! (2017年9月19日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ぬおおっ! き、鬼兵隊キタ…ッ! 高杉との絡みがあることを祈りつつ更新楽しみにさせていただきます! (2017年9月19日 20時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年8月25日 14時