【銀魂】己の行く道 真の居場所【土方十四郎】

壊れない　土方side ページ28

…きっとコイツは、その無駄に明るい笑顔の裏に、様々な感情を秘めているのだろう。抱え込んだ感情を、想いを、色んなものをひた隠して、誰にも見せないように、触れさせないように笑っているのだろう。それで俺も、俺達も、まんまとコイツに騙されていた訳なのだが。


…コイツは嘘をつくのが上手い。
…だが、それと同時に、コイツは心の何処かでその嘘を見つけてほしいと思っている。そんな気がする。当然だ。よっぽどの悪人でない限り、嘘をつくのはきっと苦しいものなのだろうから。それでも、

…まだコイツには、コイツの思う隠さなければいけない何かが、嘘をつかなければならない何かがある。


…真選組がAの居場所になった今、いつかそれを受け入れる時はきっと、そう遠くないうちに来るのだろうと、俺はなんとなく漠然と思った。


そのためにも。


『責任取って、何があっても壊れたりしないでくださいよ』


…俺達は壊れたりなんざしない。


「当然だろ」と。当たり前のことのように呟き、俺は煙をはきだした。それは至極、本当に当たり前のことだったから。


土「そう簡単に壊れたりしねェよ、俺達は」


だから余計な心配してんじゃねェよ、と。そう言ってやる。ソイツの中に居座る不安の正体を俺は知ることが出来ないしそれを知るための術も知らねぇが、それだけはハッキリと言えるだろう。自信を持って、根拠を持って。


「…なら、安心です」


折角やっと正式に公務員になったのに、また仕事探しとか有り得ないですしね、と。Aは笑う。ヘラヘラと、いつもと同じように。


「…ホントに、また居場所が出来たんですね」


…と、まるで独り言のようにソイツは呟いた。しみじみと、感慨深そうに。あるいはそれは、本当にソイツの独り言だったのかもしれない。だが、俺はなんとなく「そうだな」と返しておく。

するとソイツはクスリと笑って。


「でもまさか、土方さんが引き留めてくれるとは思いませんでしたよ」


近藤さんならまだしも、と。

確かに、そうかもしれない。近藤さんは、一度信じた者を疑うことをしない。それを、望まない。何処までも信じようとする。真っ直ぐに、淀みなく。

…だが俺は、どちらかと言えばそういう寛大さのようなものを持ち合わせていないと思う。実際、Aが真選組に来たときも、疑いに疑いまくっていたし、今考えてみれば、あの時感じていた違和感は、間違いではなかったということだ。


…普通の人間では、ねぇということに。

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