掌(てのひら) 土方side ページ18
山「…だから…そんなこと言わないでください!!Aさん!!」
「ッ…」
……ピクッ、と。俺達に向けられたままのAの背中は、山崎のその言葉を受けて大きく揺れた。それを俺は確かに、恐らくは総悟も近藤さんもそれをしっかりと目に捉えた。今のソイツの面を拝むことはまだ叶わねぇが、その小さな仕草はきっと、山崎の言葉がAの中で響いたのだと、そう信じたい。
山崎の声は、静かで埃臭いこの場所に反響するように響いていく。それはゆっくりと空間の空気に溶け込んでいきれ、やがて消えていく。その場は無音になる。そうしてAは、溜め息のような声で口を開く。
「……バカ、なんですか、本当に」
……呆れたような、何かを諦めたような、笑っているかのような、そんな声。色々な感情をはきだすように溜め息をつきながらに落とされたその声。それを耳にして、俺は一歩、前に足を踏み出した。続いて近藤さん、総悟、隊士に支えられて山崎も、歩を進める。俺達の足音が、静かに響いていく。
「……バカですよ本当に、貴方達は大バカです。溜め息しか出てこないです」
土「こちとら、お前に溜め息つかされっぱなしだ、ザマー見やがれ」
毎日毎日、溜め息ばかりつかされていたのだ。幾らか気分がいい。
「……私は、伝説の攘夷志士、紅の舞姫ですよ。警察が捕まえなくて、どうするんですか」
近「元攘夷志士を隅から隅までかっさばいてたらキリがねぇ。白夜叉も、今じゃ野放しだしな」
一歩一歩、踏み出すたびに、まるで、空いていた溝が埋まるように、ソイツとの距離がなくなっていく。
「…もし、私が本当に幕府転覆に乗り出したら、どうするつもりなんですか」
沖「その時は、責任持って俺達が止めやすよ」
……そんなつもり、ソイツはないのだろうに。
「……言っときますけど、私が本気出したら、貴方達だって…!!」
……そう言ってAは漸く俺達の方を振り向いた。何処かまだ苦しそうで、今にも泣き出しそうで、弱々しくて、それでも強い意思を宿した目と、俺の目がかち合う。丸く見開かれたその目に映ったのは。
土「……お前が何をしでかしたって、俺達は壊れねぇし、お前にんなことはさせねェ」
……その目に映っているのは、俺が差し出した掌だった。
土「帰るぞ、A」
……真選組に。
……お前の、居場所に。
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樹里(茉莉華) - マジでこれ泣けましたっ!! 沖田隊長もいいですけど、士方さんのまっすぐなものもいいですね! ピピコさんの作品はどれも大好きです!応援してます!! (2018年9月10日 16時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 天音さん» 語彙力がなくなるほどに、ですか…!嬉しいです^^私自身も楽しんで書いてます!!次の巻では大きくお話が動き出しますので、そちらでも楽しんで頂けたら幸いです!!天音さんの癒しになれますように!! (2017年9月21日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
天音(プロフ) - なんかもう面白すぎてなんて表現したら良いか分からなくなって来ましたwww (2017年9月21日 17時) (レス) id: c47ef2ab15 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» あの人達が出て参りましたねぇ…!!どうなることやら、フッフッフッ……。更新バリバリ頑張りますっ!! (2017年9月19日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ぬおおっ! き、鬼兵隊キタ…ッ! 高杉との絡みがあることを祈りつつ更新楽しみにさせていただきます! (2017年9月19日 20時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年8月25日 14時