ヒーロー気分 土方side ページ12
埃っぽい倉庫。出入り口は既に壊れており、そこから漏れる光に向かってAはゆっくりと歩を進めていく。俺達がもしソイツを捕らえるべく走り出したら、それを睨んでいるのか、Aは刀の柄に自身の手を添えたままだ。その後ろ姿はもう、伝説の攘夷志士そのものだった。
…歩いていく音。コツ、コツ、という小さな足音が、まるでAがいなくなるまでのカウントダウンに聞こえる。その音が静かに、冷徹に響くと同時に、Aは俺達から遠ざかっていく。きっとあのまま放っておいたとしたら、もう二度とその面を拝むことはねぇか、はたまた、敵として面を合わせることになるか。
…どっちも真っ平ごめん被る。
土「…A、」
…カウントダウンが、0になる前に。
…Aが俺達の前から、姿を消す前に。
俺はその背中に声をかけた。いつもと同じように。縁側に腰かけてトッポをくわえながらサボりを遂行しているAの名前を呼ぶように。自然に。
Aは一瞬、足を止めそうになるが、すぐにまた進めていく。まるで、何かを迷っているかのような、そんな足取りだった。向かう場所と、望む場所が違っていて、葛藤をしているかのような。その一瞬が、Aの感情なのだと、本心なのだと、俺は信じたい。
土「…『真選組は潰させない』」
「っ…！」
俺がその言葉を発したと同時に、Aはピタリと足を止め、肩を揺らした。刀に添えられていた手は力なく、落ちていく。それでも振り返ろうとしないソイツに、俺は続ける。
土「…お前の護りたいもんの中に、いつの間にか俺達が居た。例えその場所に居られなくなっても、護りたいと思った」
…その言葉は、嘘だったのか？
…俺はそう語りかける。懐からタバコを取り出し、ライターで火をつけた。紫煙がゆっくりゆっくりと、砂埃に紛れて混ざって、消えていく。ふぅ、と息をはきだすと、俺は口角を上げて見せた。それがソイツの目に、見えていないと分かっていながらも。
土「…俺の耳にゃ、嘘には聞こえなかったんだがな」
「…そんなの、貴方の勝手な想像じゃないですか」
私の気持ちと貴方の勝手な憶測を、同じにしないでくれませんか、と。Aはいつもと同じ声のトーンで、そこに少しの鋭さを交えて、言う。まるで、それ以上こっちの領域に入るなと警告するように。
「…あれくらい言った方が、かっこいいじゃないですか。どーせ私は悪役なんだから、ちょっとくらいヒーロー気分を味わわせてくださいよ、警察さん」
…おどけたように、演技じみた声で、ソイツはそう言うと、笑った。
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樹里(茉莉華) - マジでこれ泣けましたっ！！ 沖田隊長もいいですけど、士方さんのまっすぐなものもいいですね！ ピピコさんの作品はどれも大好きです！応援してます！！ (2018年9月10日 16時) (
レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 天音さん» 語彙力がなくなるほどに、ですか…！嬉しいです^^私自身も楽しんで書いてます！！次の巻では大きくお話が動き出しますので、そちらでも楽しんで頂けたら幸いです！！天音さんの癒しになれますように！！ (2017年9月21日 18時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
天音(プロフ) - なんかもう面白すぎてなんて表現したら良いか分からなくなって来ましたwww (2017年9月21日 17時) (レス) id: c47ef2ab15 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» あの人達が出て参りましたねぇ…！！どうなることやら、フッフッフッ……。更新バリバリ頑張りますっ！！ (2017年9月19日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ぬおおっ！ き、鬼兵隊キタ…ッ！ 高杉との絡みがあることを祈りつつ更新楽しみにさせていただきます！ (2017年9月19日 20時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ピピコ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時：2017年8月25日 14時
