318、恋は盲目 ページ22
夕日が沈みかかっている時間帯になった。
タツヤはようやく涙は落ち着いたが、宿舎の外のベンチに座ってボーっとしていた。ここは一人になりたい時、うってつけの場所だと思う。
こんなに泣いたのはいつぶりだろう。もしかすると初めてかもしれない。
やっぱり恋だなんて気づかない方が良かったのではないかとも思った。こんなに苦しくなるくらいなら。
バカだな。ヒロトを応援しようって決めたのも、彼女から身を引こうって決めたのも、全部自分じゃないか。
なのにまだ諦められないなんて、今更遅すぎる。
恋は盲目。
ふと、その言葉が頭をよぎった。本の中でくらいしか聞いたことのない表現だけど。
タツヤはいつでも行動する前に考えてから動くようにしている。
だからタツヤにはその言葉の意味はわかっていても、どうして恋をすると盲目になるのか、理解できなかった。
でも、そんな真面目なタツヤがようやく、初めてその言葉を実感した気がした。
「タツヤ？何してるんだこんなところで」
そこへ万作が通りかかった。
「元気ないな、どうした？」
「…そう？」
「悩みがあるなら聞くぞ？」
「……悩みというか…」
タツヤは「誰かに話せる内容ではない」と話すのを躊躇した。でもこのままじゃこの想いはどこにも行き場がない。
このモヤモヤが少しでも晴れるなら力を貸してもらった方が良いかな。そう思った。
でもたとえチームメイトであろうと自分に好きな人がいると暴露するのは恥ずかしいものがある。
タツヤは一旦考え込んだ後、
「…その…これは俺の友達の話なんだけど…」
そう前置きをして、話し出す。
「…つまり…」万作がタツヤから聞いた話のまとめに入る。
「タツヤの友達のA君に好きな奴ができて、でもA君の友達もまたその人が好きで…。っていうことか」
「…そいつはさ、どっちも大切なんだよ。自分の好きな人も…友達も。……だから、自分が身を引いた方がいいんだろうなって考えてて…」
「…ふーん…」
万作は、これはタツヤ本人の話だろうとすぐに察した。元気のないタツヤからも、それが見て取れる。
(…このことは誰にも話さないつもりだったんだけど…)
万作はタツヤに「ある話」をしようかどうか迷った。
だが悩んでいるタツヤを見ていたら、話そうか話すまいかとか、そんなこと言っていられなくなった。
「……タツヤ、これは俺の友達の話なんだけどな」
そうタツヤと同じ前置きをして、万作は自分の秘めてきた想いを吐き出す。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 75人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅葉(プロフ) - 夜空さん» コメントありがとうございます！楽しみにしていただいてとても嬉しいです！これからも更新頑張ります！ (2019年9月29日 11時) (
レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
夜空 - とても面白くて新しい更新を楽しみにしてます！タツヤの恋も応援したい！ヒロトの恋も応援したい！どうなるの〜汗 (2019年9月29日 2時) (レス) id: d246f2b775 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - ドルチェさん» コメントありがとうございます！とても嬉しいです！これからも更新頑張ります！！ (2019年9月23日 12時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
ドルチェ - 紅葉さん,いつも楽しみにしてます！これからも拝読させて頂きます！頑張ってください！ (2019年9月23日 12時) (レス) id: 697128a6e4 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます！アツヤの登場でさまざまな人間関係が大きく変わっていく、ということをテーマに書いていく予定ですので、楽しんでいただけると幸いです。これからも頑張ります！ (2019年9月14日 8時) (レス) id: bcd97f376b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紅葉 | 作成日時：2019年9月8日 22時
