287、信じてくれて ページ40
少しのタイムラグがあり、Aもようやく状況を呑み込めた。
貴女「…やった…やった、やった！！」
私の、今大会初ゴール。
息を切らしながら興奮を噛み締めていると、大きな影がAを覆った。
顔を上げると、クラリオが立っていた。
貴女「…！」
「立てるか？」と、座り込んだままのAに向けて手を差し伸べる。
その光景はまるで、クラリオと初めて会った時を思い出させる。けど、もうあの頃の自分とは違う。
貴女「ありがとう…」
今度はクラリオの手を借り、立ち上がった。
Aはこの時、少しでも世界のレベルに近づけた気がしていた。
クラリオ「…なかなかやるな」
貴女「…！！」
そう言い残して、クラリオは持ち場に戻った。
Aはまだ呆然とその場に立ち尽くしていた。
ようやく今までの努力が報われた気がしたから。
貴女「……っ」
目頭が熱くなったと思ったら、雫がぽたぽたと地面に落ちていく。
…おかしいな…嬉しいはずなのに涙が…
クラリオさんにああ言ってもらえる日が来るなんて、本当に夢みたいで。
キツくても、苦しくても…これだからサッカーはやめられないんだ。努力が実った時、こんなに嬉しいんだから。
自信を持てなかったからかもしれない。私が今まで失敗や緊張ばかりしてきたのは…。…いや、きっとそう。
でも、「私なんか」…そう言うのはもうやめよう。
貴女「…私、やりましたよ…！」
かつて大事なことを教えてくれた人を思い浮かべ、優しく羽飾りを撫でた。
泣きながら笑っているという、忙しない表情をしているAの隣にアツヤが来た。
アツヤ「…何泣いてんだよ」
貴女「なんか、嬉しくて…」
嬉し泣きなんていつぶりだろう。
笑って涙を拭うAにアツヤは鼻を鳴らした。
そこへ、他のメンバーも駆け寄ってきた。
明日人「やったなA！」
自分のことのように喜んでくれる仲間たちとハイタッチをかわす。
貴女「みんなありがとう！！信じてくれて…！」
ありがとう、ありがとうと何度も口にしても足りないくらいだ。私のみんなへの感謝は。
野坂「…でも、ちょっと妬けるね。Aさんがそれほどまでにこだわる相手がいるなんて」
貴女「え？」
Aが野坂の方を見ると、野坂は「何でもないよ」とだけ言った。
仲間に囲まれているAを見て、クラリオは少しだけ口元が緩めた。
そして優しい顔で笑ってるクラリオを見て、ベルガモは「うわ、珍しい」と呟いたのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 66人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紅葉 | 作成日時：2019年8月23日 13時
