267、スタメン ページ20
吉良「…お前、どうせあれが初めてだったんだろ」
貴女「初めて？」
吉良「物分かり悪い奴だな。キスだよ、キス！」
貴女「！…そ、それは…」
何か言い方が腹立つな。
吉良「…それとも、俺より先にキスした奴がいるのかよ」
貴女「い、いないけどさ…」
吉良「本当か？特にフロイあたりと、そんなことしてねえだろうな？お前がロシアにいた時とかよ」
貴女「してないって！」
小さい頃のフロイは、今みたいにスキンシップ激しい子じゃなかった。
だから、確かに初めては吉良君ということになる…。
吉良「へえ…」
ヒロトは満足そうに笑みを浮かべた。
吉良「…あのキスをなかったことになんてするなよ。俺はずっと覚えてるからな」
あんなの簡単になかったことになんて出来ないと思うんだけど…。
ヒロトと別れた後も、言われたことが頭から離れなかった。
＿_俺はどうでもいい女に可愛いとは言わねえし、ブスとも言わねえ。
私は吉良君にとってどうでもよくない存在ということか…。
それはつまり、喜んでいいこと…だよね。
…ただ…
今思えば、吉良君とのアレが本当にファーストだったんだよな…
待て待て、何変なこと考えてるんだ私。
ひとまずは、仲直りできて良かった良かった！
一人で悶えたり落ち着いたりを繰り返していると、趙金雲と出くわした。
趙金雲「ああAさん、ちょうどいいところに」
貴女「…監督？」
趙金雲「次のスペイン戦は、Aさんにも出ていただきますからね」
貴女「！！」
趙金雲「頑張ってください」
貴女「はい！頑張ります！ありがとうございます！！」
反応が遅れ、Aが返事をする頃には趙金雲はAの前から去っていた。
周りに誰もいなくなると、Aは胸の前で拳を握った。
貴女「…やった…！」
私がスタメン。
…ついに。
ついにクラリオさん達と同じフィールドに立てる。
そう考えただけで、居ても立っても居られない。
それからAはひたすら練習を重ねた。スペインと戦うにあたり、少しでもできることを増やしておきたいから。
…それなのに…
＿_お前に俺たちと戦うなんて無理だ。試合には出ないことだな。
＿_お前みたいな女のプレイには期待していない。
どうしてもベルガモたちの心無い言葉ばかり思い出してしまう。
そんな記憶をはねのけるべく、Aはボールを蹴り続ける。
風丸「…そんなに飛ばして大丈夫か」
風丸が見兼ねて注意を入れるほどに。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年8月23日 13時
