266、お前のせい ページ19
Aはようやく謝ることができて良かったと、肩の荷が降りた気がした。
吉良「お前ずっと俺から逃げてただろうが」
貴女「だ、だってキミずっと怒ってたみたいだったし」
吉良「そう見えたのならお前のせいだな」
貴女「は？」
「お前が他の男のことばっか考えてるからだろ」
そんなこと、ヒロトは照れくさくて言えなかった。
吉良「…って、いつまでも喧嘩したままじゃいられねえだろ。試合も迫ってんだし」
また喧嘩の空気に入る前に止めたヒロト。
貴女「…それもそうだね」
吉良「それに、そうなるとまたタツヤが仲直りしろってうるさいからな」
貴女「…基山君が？」
基山君、私達のことずっと気にかけてくれていたもんね。
心配かけて本当にごめん基山君。そしてありがとう。
吉良「……あと、また壮行会の時」
貴女「…！」
そう言えば壮行会の件があったから、吉良君と気まずくなったんだよな。
………
あの時のことを思い出した途端顔が、そして唇が熱を帯び始めた感覚がした。
吉良「俺がお前にやったこと、あれは謝らねえからな」
貴女「……はい？」
「俺がお前にやったこと」、それが何なのか言われなくてもわかった。
吉良「お前を可愛いって言ったのも、嘘じゃねえし」
え。嘘。ただからかわれてるのかと思ってたのに。
貴女「…い、今までは散々ブスブス言ってたじゃん」
どうして今更真逆のことを言うのかと、Aは混乱していた。
吉良「お前は！…いちいち反応が可愛いからからかいたくなるんだろうが…」
貴女「はっ…！？」
真っ赤になるヒロトに引っ張られるようにAまで赤くなる。
ヒロトは大きくため息をつき、言った。「…一回しか言わねーからよく聞けよ」
吉良「俺はどうでもいい女に可愛いとは言わねえし、ブスとも言わねえ」
貴女「……」
吉良「…そういうことだ」
貴女「…えっと…？」
今のAの頭では上手く情報が処理できなかった。
吉良(…本当鈍い奴。何も分かってないな)
…いや、何も分かってなかったのは自分の方だったのかもしれない。
ヒロトはそこで初めて自覚した。
ここのところAとすれ違いを繰り返して、よくわかった。
…俺はこいつが好きなんだ、と。
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作者名：紅葉 | 作成日時：2019年8月23日 13時
