これを愛だというならば

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「あ、これ……」






久しぶりの昔のものを整理していたら出てきた写真。
高校二年の学校祭の写真で、シンボルだった桜の木の前で二人で撮った写真。

何度も撮ろうって言ったのに、嫌だの一点張りで無理やり撮らせたっけ。




　

「あの時はユンギのこと何も分かってなかったなあ」






どうしてユンギが写真を撮るのを拒んだのか、その時の私は何も知らなくて。
その後ユンギから言われた言葉は今でも忘れない。




　

「ほんと、優しすぎてバカみたい。私だってあの時もう……」






この時にはもうユンギがラッパーをしていたことは知っていた。
小学生の頃、友達からちょっと悪く言われただけで書き始めて。何だかんだ言ってたのに、いつの間にか音楽は彼にとってかけがえのないものになっていた。



最初はぶつぶつ言ってたのに、だんだん楽しそうに音楽と向き合っていく彼の姿が好きだった。
それより前から彼のことを特別に思っていたけれど、音楽に触れている時の彼にどんどん惹かれていった。





それまで何もなかったユンギの世界に音楽というものが加わって、嬉しそうに曲を聞かせてくれるユンギは幸せそうだった。

たくさんバイトをして、自分でお金を貯めながら必死にスタジオで作業するユンギは大変そうだったけど楽しそうだった。



だから何も考えてなかった。
これからもユンギは素敵な曲を聞かせてくれるんだって。
私の隣で新しい曲ができたって一番に聞かせてくれるんだって。


彼のことを何も分かっていなかった。


　





　
上京すると聞くまでは。





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