25 ページ25
.
それからしばらく。
今日の講義が終わって、久しぶりにバイトに直行。
ここ最近は休んでたから、ヒョンにめちゃくちゃ怒られた。
俺だって忙しいんだよ。もうすぐ評価テストもあるし。
舞踊科の俺は、月に一度評価テストがある。
まあ教授とか専門家とかの前で踊るだけなんだけど、これが結構大事で。凄い奴らはたくさんいるし、俺のように努力で這い上がってきた奴らも五万といる。
そんな中で一定の評価を貰わないといけないわけで。
もし評定が悪ければ留年の危機もある。
だから最近は大学の練習室に篭りっぱなしだった。
バイトが終わって、また練習室に戻る。
ここはずっと開いてるからいつでも自由に使えて、結構便利だ。
「っ、だめだ……もっと、もっとやらないと……」
納得のいかないものばかり。
天才と呼ばれる奴らの踊りを思い出せば、俺のがちっぽけに思えて。こんなのじゃダメだと思ってしまう。
あいつらを超えたくて、ただひたすらに踊り続けた。
日付が変わった頃、ようやく家に帰った。
ベランダに出れば、冷たい風が疲れを忘れさせてくれた。
まだ、雪は降っていない。
もうそろそろ降ってもいい頃だというのに。
そんなことを考えていると、隣の部屋から誰かが出てきて。
「A……？」
姿は見えなかったけど、声でAだと分かった。
誰かと話しているようで、不謹慎だけど少しだけ興味が湧いた。
「うん。ごめんね。
ありがとう、テヒョン」
「て、ひょん……？」
確実に聞こえたテヒョンという言葉。
もしかしたら、同じ名前の違う人かもしれない。
だけどその時の俺にそんなことを考える余裕なんてなくて。
脳裏に浮かぶあいつの顔と、悲しみを含んだAの声が頭から離れなくて。
何も考えずに家を飛び出した。
「ジミナには、言いたくないの」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 277人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
閔(プロフ) - まなさん» 読者の皆さまに読みやすいように、綺麗に文章を書くよう心がけているので、そう言っていただけて嬉しいです。切なくも前向きなお話でしたが、皆さまにも伝わったらいいなあ...と思っています。ご愛読、ありがとうございました！ (2019年12月25日 12時) (
レス) id: 61c94025e1 (このIDを非表示/違反報告)
まな - 悲しいです。とても綺麗なお話でした。 (2019年12月25日 12時) (レス) id: 77b6913256 (このIDを非表示/違反報告)
閔(プロフ) - じみちむさん» なんて嬉しいお言葉......私はじみちむ様のお言葉に今涙しています...笑 温かいお言葉、しみじみと感じております。本当に嬉しいです。ありがとうございました！ (2019年12月25日 12時) (レス) id: 61c94025e1 (このIDを非表示/違反報告)
じみちむ(プロフ) - 泣いてます（ ｉ _ ｉ ） (2019年12月25日 8時) (レス) id: f91208f58d (このIDを非表示/違反報告)
閔(プロフ) - サヤさん» もうその一言だけで嬉しさが溢れてます(*^^*) サヤ様に私の気持ちが届いたのならよかったです。 本当にありがとうございました！ (2019年12月22日 23時) (レス) id: 61c94025e1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：閔
| 作成日時：2019年12月20日 21時
