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「わかったよ」
黄色とピンクの星を手のひらに乗せ見せると、玉森は嬉しそうに笑った。その顔が妙に大人っぽくて、ドキッとしてしまった。
「それにしてもよく覚えてたな、ここ」
「えー、そんなの忘れるわけないじゃん。絶対みんな覚えてるよ。ね、ガヤ」
玉森が言うと、どういうわけかめちゃくちゃ不機嫌そうな藤ヶ谷がこっちを見た。
「そう簡単に忘れねーだろ。気持ちよく寝てんのに、すごい勢いで起こされたし」
「でも、そのおかげでみんなで願い事できたじゃん」
「なに? 自分の手柄だって言いたいわけ?」
「別にそんなこと言ってねーし」
気分屋の藤ヶ谷に振り回されることなんて昔はよくあったが、今では全くと言っていい程ない。あったとしても無視や舌打ちなのに今日は文句は言うわ、気分の上がり下がりも激しいしわ、一体どうしたというのだろう。
「いじめっこのガヤはほっといて俺のとこにおいで」
戸惑って若干の挙動不審になっていた俺に、玉森が腕を引いて抱きしめてきた。
「うえ?」
「たま!」
「いじめるガヤが悪いんでしょ。いい加減、小学生みたいなことやめたら?」
「はあ? どこが小学生みたいなんだよ」
「それ言わないとわかんない?」
頭の上で繰り広げられる会話の意味が分からず、玉森の温かさもあって腕の中でぼんやりしてしまう。
「ちょっと北山、いつまで抱きしめられてんの!」
「え?」
ヒステリックに叫ばれたと同時に強く腕を引かれ、玉森の腕の中から藤ヶ谷の前に身体が移動する。
「藤ヶ谷?」
様子のおかしな藤ヶ谷が若干心配になり見つめると「じろじろ見んなっ」て赤い顔で言われた。
「ええ?」
自分の前に俺を持ってきておきながらじろじろ見んななんてあまりにも理不尽に思えたが、なんだか藤ヶ谷がジュニアの頃みたいで可愛い。
「じゃあ、そろそろお願いしよっか」
俺もジュニアの頃みたいな気持ちになって、思わず藤ヶ谷の頭を撫でてしまった。
「え? なに?」
これ以上ないくらい目を大きくした藤ヶ谷が更に顔を赤くし動揺していて、これは失敗しただろうかと焦る。
「あ、ごめん。なんか藤ヶ谷が可愛くて、つい」
「は? ちょっと待って!」
なにを待てばいいのか分からないが、藤ヶ谷は俺の目の前に腕を出しなにかを止めている。
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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月17日 0時