噎せ返るほど甘い匂いの中で

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開けてしまったツナ缶にため息をつきながらフライパンに水とコンソメ、塩と一緒に入れ加熱する。そして沸騰したらパスタとキャベツを放り込んだ。

前に北山が簡単だからと教えてくれたパスタ。本当に簡単だし美味しくて、買い物に行き忘れた時なんかはよく作っていた。

北山も好きだって言ってたから一緒に食べようと思ったのに、一皿無駄にしてしまった。当たり前に来ると思っていたことが恥ずかしい。



「はあ……」


フォークにパスタを巻き付けては解いていると、携帯電話が震えた。

メッセージかと思い無視していたが、震え続けるから手に取ると北山からの着信。

既読にしたまま返信してなかったことを思い出し、話したい気分ではなかったが仕方なく通話ボタンを押した。


「はい」


“藤ヶ谷？ どうした？ なんかあったのか？”


聞こえたきたのは心配そうな声。嬉しくて、でも申し訳なさと恥ずかしさで素っ気なく答えてしまう。


「今日病院行ったから報告しようと思っただけだし、次会った時で大丈夫だから」


“あと30分したらここ出るから、一時間後くらいに行くわ”


「ほんといいって。一緒にいる人たちにも悪いだろ」


駄々をこねているようなものだというのは自分でも理解していて、でも何でもない態度が取れないから今日は放っておいて欲しい。そう思って少し強めに言ったのに、北山は行くからと言って電話を切った。

ここまで言ったら普通は来ないだろうに、北山には通用しない。めちゃくちゃ面倒だけど、でも北山だなと思う。


そしてそれを嬉しいと思っている自分もなんなのか。


イライラするような恥ずかしいような、よく分からない気持ちでとりあえずパスタを食べ一皿分はラップをして冷蔵庫に入れた。

待っていたと思われるのは嫌で、急いで風呂の準備をする。

だからといってお気に入りのバスソルトを入れている時間なんてなく、せっかくのリラックスタイムも時間を気にしながらになって、なにをやってるんだという気持ちで風呂場を後にした。

急いで保湿をし、髪を乾かし、部屋着に着替える。


何度も来ている北山を迎えるのに緊張して何にも気にしていない、いつも通りに自分を見せようと必死になっている。
　

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