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「俺たち付き合ってもう四年だぜ? 男同士だからって簡単に考えてんなよ」
「簡単になんて考えてない。ただ自分たちの気持ちの問題だと思ってたから」
「それが考えてないってことだろ」
北山のことが大切で、ずっと傍にいたいと改めて思った。
だが一生一緒にいるということの意味を、俺は深く考えていなかったかもしれない。
「……とりあえず今日は帰って」
このまま帰ったら気まずくなるのはわかっていたが、言うべき言葉が見つからなく追い出されるように玄関に向かう。
玄関までは来てくれた北山にほっとしつつ言葉を探した。
「また連絡する」
「……ああ」
他に思いつかなくて苦し紛れの言葉だったが、とりあえず反応があって安堵する。
しかしドアが閉まると、もうここには来られないような気がして今すぐ戻りたくなった。だが戻ったところで北山を怒らせるだけで、途方に暮れながら帰路に就く。
テーブルに荷物を置き、買ったままのパンの袋を見てじわりと涙が込み上げた。
なんでいつも余計なことを言ってしまうんだろう。
インテリアの勉強をしてると言われた時、責めるんじゃなくて話を聞いて応援すればよかったんだ。それが出来なくても、北山が最初に帰ってって言った時に帰ればよかった。
ケンカになると思って無理やり話を切り上げてくれたのに、焦って失望させてしまった。
北山との付き合いを簡単に考えていたわけじゃない。
告白した時も関係を長く続けていくには家族の理解が必要だと考えていた。しかし一緒にいる時間が長くなるうちに、その意識が薄くなっていた。
長くなればなるほど向き合わなければいけない問題だったのに。
ずっと一緒にいるということは家族になるということ。
二人で生活は出来るかもしれないが、家族に理解されないのは辛い。
特に北山は片親で一人っ子だ。反対されるだろうし、もしかしたら罵倒されるかもしれない。だが認めてもらえるよう、努力していかなければいけない。
二人でいられれば十分幸せだし、今がずっと続けばいいと思っていた。
その為に自分を変えていかなければいけないのも分かったし、少しずつ出来てきたように感じていた。
だが俺は何もわかっていなかった。
北山が不安がっていると玉森は言っていたが、そりゃそうだと今痛いほど感じている。
不安の正体は俺だった。
四年間の思い出が走馬灯のように胸を過り、また涙が溢れた。
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くらげ(プロフ) - tenさん» tenさーん!最後までお付き合い頂き誠にありがとうございます。最初はTさんが泣いて終わる予定だったのですが後味どうなんだろう…と今回の形にしてみました。喜んでもらえて良かったです。また読み返してやってください。コメント本当にありがとうございました! (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - seaさん» 良かったと言って頂けて安心しました。タイトルも気に入って頂けて良かったです。今後もよろしくお願いします!(*´-`) (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - seaさん» seaさーん!私こそ最後まで読んで頂きありがとうございます。書いてる期間が長すぎてこれ楽しみにしてくださってる方いるのかなと思うこともあったので、そう言ってもらえてとても嬉しいです。大人になると出てくる仕事や恋愛の悩みと成長を含めて書いてみましたが→ (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - mimotaさん» mimotaさーん!完結までお付き合い頂き誠にありがとうございます。感動しながら読んで頂けたなんてとても嬉しいです。これから色んなことがあると思いますが二人なら乗り越えていけると思うので妄想いっぱいしてくださると嬉しいです。いつも沢山ありがとうございます! (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - chaizoukunさん» コメントありがとうございます!私の作品が大好きだと仰ってくださり更には過去作も何度も読んで頂いて本当に嬉しいです。お気に入り作者登録がキリの良い数字になったら番外編を書こうかなとぼんやり思っておりますがそんな日が来るのか(笑)今後も宜しくお願いします (2022年11月16日 21時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2022年7月1日 0時