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「……母さんは少し席を外してなさい」
父さんが母さんに言う。泣いたまま黙ってリビングを出て行く姿に胸が苦しくなった。
「相手もお前と同じ気持ちなのか？」
「……それはわからない」
「わからない？ わからないのに父さんたちに言ったのか？」
父さんの語尾が強まったのを感じる。
「俺がずっと優柔不断だったから呆れられちゃって。情けないけど、それでやっとこのままじゃ駄目なんだって気付いた」
北山は俺との関係にまっすぐ向き合ってくれていたのに、俺がいい加減だった。
「相手の気持ちも確認せずにって思われるだろうけど、まず俺の気持ちを見せたいんだ」
こんなの上手くいってないって言ってるようなものだし、よりマイナスなイメージを持たれるかもしれない。でもこれ以上言いようがないし、嘘は付けない。
「そうか」
父さんはそう言ったあとしばらく黙っていたが、食べなさいと言われたので目の前の食事に箸を付けた。
母さんのことを思うと胸が痛んだが、そのまま残っているよりはと思い食べる。
「母さんも今は話せる状態じゃないし、すぐに解決できるような問題じゃない。正直父さんも混乱してる。だが本気なのは伝わった」
「うん……」
「相手が女性だったらと思うし応援するとも言えないが、いつの間にか大人になっていたんだなと少し感慨深いな」
「なにそれ」
この状態で俺の成長を感じている父さんに少し笑ってしまって、肩の力が抜けた気がした。
母さんに泣かれてショックだったが罵倒されてもおかしくなかったし、受け入れられないまでも話を聞いてくれる父さんがいる。多分とても恵まれた環境だろう。
「母さんとは話しておく。時間をかけて説得していきなさい」
父さんがいた時は気が重いと思ったが、母さんと二人だったらお互い心が折れていたかもしれない。
父さんに感謝しつつ家を出る。
次、実家に戻ってこれるのがいつになるかは分からないが後悔はしていない。むしろ改めて両親に感謝した。
クリスマスも正月もひとりで過ごすのは、初めてだった。
幸いにも仕事が忙しく、家庭を持っている人以外は出勤だったから寂しさもあまり感じずに済んだ。
焦りはあったが、北山も頑張っているのかなと思うと頑張れた。
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くらげ(プロフ) - tenさん» tenさーん！最後までお付き合い頂き誠にありがとうございます。最初はTさんが泣いて終わる予定だったのですが後味どうなんだろう…と今回の形にしてみました。喜んでもらえて良かったです。また読み返してやってください。コメント本当にありがとうございました！ (2022年11月16日 22時) (
レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - seaさん» 良かったと言って頂けて安心しました。タイトルも気に入って頂けて良かったです。今後もよろしくお願いします！(*´-`) (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - seaさん» seaさーん！私こそ最後まで読んで頂きありがとうございます。書いてる期間が長すぎてこれ楽しみにしてくださってる方いるのかなと思うこともあったので、そう言ってもらえてとても嬉しいです。大人になると出てくる仕事や恋愛の悩みと成長を含めて書いてみましたが→ (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - mimotaさん» mimotaさーん！完結までお付き合い頂き誠にありがとうございます。感動しながら読んで頂けたなんてとても嬉しいです。これから色んなことがあると思いますが二人なら乗り越えていけると思うので妄想いっぱいしてくださると嬉しいです。いつも沢山ありがとうございます！ (2022年11月16日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - chaizoukunさん» コメントありがとうございます！私の作品が大好きだと仰ってくださり更には過去作も何度も読んで頂いて本当に嬉しいです。お気に入り作者登録がキリの良い数字になったら番外編を書こうかなとぼんやり思っておりますがそんな日が来るのか（笑）今後も宜しくお願いします (2022年11月16日 21時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くらげ
| 作成日時：2022年7月1日 0時
