君以外もう知らなくていい 4

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二人で帰っていく姿を見送ってから建物を出ると、見知った姿があった。


「裕太さん！」
「……麻衣子さん」


宏光と三人で会ってから数日後、今日と同じように職場の前に現れた。

無視して帰ろうかと思ったが一回でいいから食事に行って欲しいと言われ、罪悪感もあったから仕方なく付き合うことにした。



カジュアルなフレンチの個室に通され、どんな話をされるのかと構えていたらお見合いより前から俺のことを知っていたと言う。

出会いを聞き、そんなことがあったような気もしたが客の顔までは覚えていない。
言ってくれていたらと思ったが言われたからといって気持ちが動くことはなかったし、俺の態度が言わせなくしていただろうことも予想できる。


言葉が見つからなくて黙っていると、正直な人ですねと笑った。


「こういう時、普通は嘘でもごめんとか言うと思うんですけど」
「あー」
「でもそういう裕太さんがいいなって思います」
「そうなの？」


予想外な言葉に思わず尋ねる。


「迷惑なら迷惑って態度に出るし、嘘はつかないから伺わなくてよくて安心出来るというか」


多分今までだいぶ傷つけてきただろうに、こんな風に言えるこの人は強いのかもしれない。


「今日はお話の他に、これを渡したくて」


そういって徐にバックから出されたファイル。
見てみると性別、年代別に好きな服のジャンルが分類され、更に挑戦したいアイテムなども記された書類だった。


「アンケートを取ってまとめてみました」
「なんで？」
「少しでも裕太さんの力になりたくて」
「あー、でも」
「裕太さんがあの人のことを好きなのは分かってます。でも私はやっぱり諦めたくない。だから頑張りたいんです」


正直めんどくさい。でも彼女の言葉が、今の俺と同じ気持ちだったから断れなかった。


「宏光以外好きになることはないしもう食事も行かないけど、それでもよければ」
「ありがとうございます！」



麻衣子さんはそれから何度かやってきて、ファイルを渡していった。

身長が明記されているのがありがたいし、体重は書いてなくても体形ごとのまとめもされていて分かりやすい。ファッションに興味が有る無しに関わらない市場調査なんて、なかなかやらないから貴重な資料になる。


利用している気にもなったが宏光に使えるものは使えと言っている手前、断るのも違う気がした。
　



　

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