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「…………きたやまっ!」
向けられる小さな背中に気が付けば俺は声を上げていた。
振り返った大きな目は、端がほんの少し赤くなっている気がする。
「俺、北山に言いたいことがあって……」
北山の目は揺れていた。その瞳の中に映る俺も同じように揺れている。
「このまま次いつ会えるか分からないとか、俺は無理」
北山は何も言わない。ゆらゆらと瞳を揺らして見つめてくるだけ。
「北山は? 北山は嫌じゃない?」
不安になって聞くと、北山は微かに皺を寄せた。
「俺じゃなくて、お前が思ってること言えよ」
普段だったらなんだよって笑うか照れながら言葉を濁したりするはずなのに、問いかけには答えずまっすぐ俺を見つめた。
北山の考えてることが分からなくて怖気づきそうになる。でもここで言わなかったら、もう二度と伝えられない気がした。
ただの友達として、離れていくのは絶対に嫌だ。
「おれ……俺っ、北山が……」
北山の目からパチッと火花が飛んだ。見つめてくる目の奥がチカチカと揺れ輝いている。
その輝きが綺麗で、もっと見たくて俺は口を開いた。
「……北山が好きだ」
火花が弾けて目の奥が赤く燃える。
そしてぽたりと雫が玄関に落ちた。
「きたや……」
「……言ってくれるなんて思ってなかった」
泣き顔に慌てて名前を呼ぶと、北山は独り言のようにぽつりと言った。
「え?」
「好きだって、言葉にするなんて思ってなかったから……」
そこまで言うと大きな目からぽろぽろと涙がこぼれ、最後はしゃがみ込んでわんわん泣くから同じようにしゃがみこんで訳が分からないまま背中を擦る。
「……泣かないで」
原因が分からないから掛ける言葉も分からず、ひたすら背中を撫でてていると暫くして泣き声が止んできた。
「こんなところにいたら冷えちゃうし、部屋に戻ろう?」
顔は上げなかったが嫌とは言わなかったので、玄関床に置かれた荷物を手に持って上がる。
北山はゆっくり立ち上がって俺のあとに続いた。
「飲み物用意するから、ちょっと座ってて」
そう言うと、ゆっくりとした足取りでローテーブルの前に置かれたクッションに腰かけた。
スティックタイプのカフェオレにお湯を注ぎ、水と一緒にテーブルに運ぶ。
北山は最初に水を飲み、はー……とため息だか何だか分からない息を吐きだした。
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くらげ(プロフ) - tenさん» tenさーん!いつもあいさつで弱音を吐いてしまってすみません、お優しい言葉ありがとうございます(;_;)こちらこそいつも読んでコメントを頂き本当にありがとうございます!Tさん流石にFさんの行動で気付いちゃいました笑 これからもお付き合い頂けると嬉しいです(*´-`) (2021年12月22日 0時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - aaaさん» aaaさん!ごあいさつも楽しく書きたいんですがここでしか言えないので毎回弱音を吐いてしまい、でも優しい言葉を掛けて頂き本当にありがとうございます(;_;)Kさんが包み込む愛ならFさんは真っ直ぐな愛というか覚悟がまだないだけで好きの大きさは変わらないんですよね。 (2021年12月22日 0時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
ten(プロフ) - Tくん、FKの関係に気が付いてたんですね!今後Tくんがどう出るか気になる… あと、挨拶を読みました!更新して、読ませてくれて、こちらこそ本当に感謝してます。いつも楽しませてもらって、ありがとうを何回でも伝えたい気持ちでいっぱいです。 (2021年12月19日 23時) (レス) @page48 id: 6e8b2c1d84 (このIDを非表示/違反報告)
aaa(プロフ) - くらげさんのお話は細部に渡って心理描写が丁寧で読み応えがあります。くらげさんのペースで、よきタイミングで更新お待ちしてます行く末見守らせてください…!「お前が頼んだんだろ」「難しいやつ」コレをいつも思い出します。Kくんの方がやはり情愛深いのかなぁと。 (2021年12月18日 21時) (レス) @page48 id: 28fb511570 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - tenさん» tenさん、ありがとうございます!悶々とさせてしまってすみません>_< Tさんがきっかけではありますがいつかはぶつかる壁なのでここをどう乗り越えていくのか、そろそろTさんも動き始める予感なのでこれからも読んで頂けると嬉しいです。コメント本当に力を貰ってます! (2021年12月13日 23時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2021年9月20日 23時