君以外もう知らなくていい 1

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「……あのさ、今日泊まっていい？」
「明日、仕事休みなの？」
「そういうわけじゃないけど」
「いいけど珍しいね」


お互いサービス業で連休が少ないから、二日連続で泊まることはほぼない。


北山は体力があるから平気なようだが、連日は俺が辛かった。

別に北山が寝かせてくれないとか、そういうわけではない。どちらかというと俺が我慢出来なくなる。


「じゃあ、夕飯なにか買ってく？」


嬉しそうに言ってくる北山が可愛い。


「え、夕飯食べるの？」
「え、なんで？ 食べるでしょ」
「こんだけ食べてまだ入るの？」
「だって今すぐ食べるわけじゃないじゃん」
「そうだけど……」


何にしよっかなーなんて鼻歌交じりに歩く北山に釣られて、少しだけ食べられそうな気持になってくる。


「そうめんなら食べられるかも」
「いいね！ じゃあ、スーパー寄って帰ろ」


スーパーで卵やきゅうり、ハムなどを買って帰路に就く。

泊まる目的で北山の家に帰ってきただけで、少しドキドキした。


久しぶりに二人で風呂に入り、のぼせるギリギリで出たはいいものの、火照った北山が色っぽくてそのままベッドへ。

ひとしきり盛り上がった後、サッとシャワーを浴びてから腹が減ったとそうめんを食べる。


放置していた携帯電話を見ると玉森から今日のお礼と、北山と上手くやっていけそうという旨のメッセージが入っていた。

文句を言われるのも癪に障るが、上手くやっていけそうってなんなんだと勝手に苛々する。



「なんかあった？ 眉間に皺寄ってるけど」


自分の眉間に抑えながら言ってくるのに、お前のことだよと心の中で返し


「別に。それより玉森からなんか連絡入った？」


と聞いた。


「ああ、どこか行きたいとこありますか？ って」
「ふーん」
「なんだよ、お前が聞いたんだろ」


自分でもなにやってんだと思うが、北山は呆れたように笑うだけ。

こういう穏やかなところに、だいぶ助けられている。


布団に入るとすぐに寝息が聞こえ、寝つきの良さを羨みながら、なんだかんだ言って緊張していたのかもしれないと思う。


「ごめんね」


気持ち良さそうに眠る北山の、まあるい額にそっと唇を押し当てた。

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