君以外もう知らなくていい 1

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宏光を困らせたいとか？



ハズレではないが、当たりじゃないように思う。


「でも俺なんかが初めて指輪を贈る相手でいいの？ 本当に好きになった人に……あ、でも付き合ったことあるから指輪あげたこともあるとか」


自分の気持ちがよく分からず考えていると、そんな声が聞こえた。


「別に初めての相手とか…………あ、」


浮かんだ言葉に思わず口を押える。


「やっぱ嫌だった？」
「ううん、そんなんじゃない」


初めての指輪を贈る相手が自分でいいのかと言われ、俺はいいと思った。


それどころか初めて指輪を贈る相手が、宏光で嬉しいと思っている。



(これってどういうこと……？)



好きになったことはなくても付き合ったことはあるし、疑似恋愛体験は何度もしてきた。

今それ以上のドキドキが胸にあることは確かで、入り口なのか中間なのかは分からないが、もしかしてこれが恋なのではないかと感じている。


「大丈夫ならいいけど」


不思議そうに首を傾げる姿に、宏光がいいんだなんて言えない。

俺の頼みを聞いてくれてるだけで恋人ではないし、友達なのかすら分からない。
もしここで伝えたら恋人役を断られるかもしれないし、仮にそうならなかっとしても自然に話すことは出来なくなってしまうだろう。


それに宏光には恋人がいる。上手くいってそうだし、何より大切にしているのが伝わっていた。

宏光の恋人も知っているらしいし、ガヤとの関係を考えても言っていいことは一つもない。



(本当に……好きになっちゃったのかな)



恋に理由はないなんて言うけど、自分でも半信半疑。

最初に見た時この人だったらと感じたのは、今考えれば好きな顔のタイプだったのかもしれない。
でも顔だけで好きになるなら、可愛い女の子と付き合った時に好きになってる。

だからきっとそれ以外の何かが引っ掛かったんだろうが、それが何かなんて思い出せない。


この気持ちが本物だとしたら、絶対に引き返した方がいい。さすがそれは分かる。


でも恋も知らなかった俺が、引き返し方なんて分かるはずがない。


「うーん」


どうしたものかと考えていると、宏光が不思議そうな顔で首を傾げる。


「どうした？ なんかあった？」


どうやら自分の世界に入り過ぎて、心配を掛けてしまったらしい。

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