君以外もう知らなくていい 1

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「この前も思ったんだけど、宏光って服に興味ないでしょ？ 父親御用達の店だから、パートナーとして連れていくなら服装はある程度ちゃんとした方がいいと思うんだよね」



(それは……ダサいと言われているんだろうか)



自分のセンスがいまいちなのは分かっているが、面と向かって言われるとショックだ。


「あ、ごめん。ショック受けちゃった？」
「や、……大丈夫……」
「ごめんね。似合う服選んであげるから許して」


目の前で両手を合わせながら、チラッと見つめてくる顔に絆さてしまう。


「服選ぶの得意じゃないから、選んでもらえると助かる」
「頑張りまーす」


そういって入った店内はお洒落すぎて、場違いな雰囲気に落ち着かない。


常連なのか店員に会釈してサッサと奥に入ってしまうから、慌ててあとを追う。


「見た感じゆるい服が好きなのかなって思ったんだけど、大きすぎるとバランスが悪くなるんだよね」


そう言いながら、キレイめ色のドルマンルーズポロシャツを俺の体にあてた。


「でも好みと違う服選んでも着ないでしょ？ だからこれとかいいと思うんだけど」


ドルマンだから裾は広がっているが、襟付きでボタンを閉められるのが清涼感が出ていいらしい。


「下は暗い色にするのが鉄則だけど、全体的に白っぽくまとめるのはあり」


そう言って白のルーズテーパードワイドパンツとロングタンクトップ、アイボリーのサンダルとどんどん追加していく。


「淡色合わせは似合うと思う、顔の雰囲気に合ってるし。あと」
「ちょっと待って。選んでもらうのは嬉しいけど、俺そんなに買えねーよ？」


そう言うときょとんとした顔をしたあと「あー」と声を出した。


「大丈夫大丈夫、俺が払うから気にしないで」
「え、でも俺の服だろ？ 親御さんに会う時の服は買ってもらうって話ではあったけど」
「デートの時はおしゃれでいて欲しいじゃん」
「……それ俺がダサいって言ってるだろ」


あははって笑うだけで弁明しない玉森さん。


「……別に分かってるからいいけどさ」
「でも焼肉の時のセパレートは可愛かったよ？」


拗ねたみたいな口調になってしまったのに、さすがに悪いと思ったのかフォローしてくる。

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