君以外もう知らなくていい 1

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それから好きな音楽や食べ物の話でひとしきり盛り上がり、あっという間に水族館に到着した。


「腹減ったなー」
「ご飯はもうちょっとあと。とりあえず中に入ろ」


入口でチケットを買って中に入る。

すると、すぐにこっちと手招きされる。


「よかった、まだ席空いてる」


大きなプールが設置してある会場は、大体の席が埋まってしまっていた。


「一番前と後ろ、どっちがいい？」
「そりゃ前でしょ」
「ふふ、了解」


盛大に水がかかるであろう場所は子供連れの家族ばかりで、大人はほぼいない。


空いている場所に座ると、すぐに係員にビニールを渡される。

携帯電話は鞄の中にしまい、スタンバイした。



なんだか子供のようにワクワクして、その瞬間を待つ。


イルカがプールに現れジャンプすると、大量の水が飛んできた。



叫び声があちこちで聞こえ、俺も声を上げてしまう。

ビニールで前を防いでも入ってくる水に楽しくなって、わけもなく笑いだした。




目の前で繰り広げられるショーを夢中で見る。



終わった頃には髪は濡れ、スタイリングも何もなくなっていた。



「濡れたねー」


玉森さんが楽しそうに頭の水を払う。


「な、思ったより濡れた」


ぷるぷると頭を振ると「濡れる！」と怒られ、そっちもじゃんと返すと「ほんとだー」と笑った。

自由というか天然というか子供っぽいというか、でもそれが全部可愛く見える不思議な魅力がある。


「んー、とりあえずご飯食べに行こ」
「え、もう出んの？」
「再入場出来るから大丈夫」


入口を指すから慌てて言うと、あっさりと返ってきた言葉。

来慣れてるのか調べてくれたのかと考え、多分調べてくれたんだろうと思った。


「なに食うの？」


駐車場に車を置いたまま駅に向かう姿に問いかける。


「しらす丼。並んでるかもしんないけど」
「江の島っぽい！ いいよ、並ぼうぜ」


俄然テンションが上がってそう言うと、玉森さんはじっと俺を見た。


「なに？」
「食べるの好きなんだなーって思って」
「うん、好き。美味いもの食べると元気になれる」


思ったまま言うと、あははってまた笑い出す。

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