君以外もう知らなくていい 1

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車で迎えに来ると言われ、マンションの前で待つ。

遊園地とかどうです？ と言われたが待ち時間が多く会話に困るかもしれないと、雨が降っても行けるから水族館を提案した。


ビッグシルエットの黒Tシャツにワイドパンツとサンダル。

藤ヶ谷と趣味が合うと言っていたし、この前会った時もお洒落だなと思ったが、それに合わせるセンスがないから無難なものを選んだ。



現れた玉森さんは予想通りというか何というか、高級車に乗っていた。



「おはようございます」


そう笑顔を向ける玉森さんは爽やかで、俺に頼まなくても彼女なんてすぐ出来そうなのにと思う。


「おはようございます」


でも出来そうだからって出来るわけではないのも分かるから、言葉にはしない。


「晴れてよかったですね」
「はい。でも朝早く迎えに来てもらって、すみません」
「俺が来るって言ったんだから気にしないでください。それに運転好きですし」
「運転好きなんですか？」
「運転してる間は無心になれますから」
「じゃあ、散歩も好きなんですか？」
「あ、はい。なんで分かったんですか？」
「なんとなく」


色々抱えてるんだろうなとは思ったが、そこは俺が深入りすることろじゃないだろうから話を変えた。


「あの、言おうと思ってたんですけど敬語やめません？ あと出来れば普段から恋人っぽく呼び合った方が、それっぽくなるんじゃないかと思ってるんですが」


確かに普段から呼び慣れていないと、ご両親の前で思わずなんてことになってしまうかもしれない。


「分かりました。なんて呼んだら？」
「んー、やっぱり名前呼びじゃないですか？」
「名前呼び？ ハードル高くありません？」
「こういうのは慣れだと思うんで」


慣れと言われればそうなのだろうが、藤ヶ谷だって普段は名前で呼んでいないのに……と思う。

だが恋人らしさを出すには、名前呼びが一番いいのは間違いないだろう。


「わかりました。えーと」
「裕太」
「うん、裕太。俺は」
「宏光ですよね？ 知ってます」


サラッと言われて驚いて目を大きくすると、バックミラー越しに笑われる。

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