君以外もう知らなくていい 1

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仕事終わりでカフェ定食。


雰囲気のあるビルの一階で、道路に面した部分はすべてガラス張りで解放感がある。

ごはんのおかずからおつまみ、スイーツまで幅広くドリンクも種類が豊富で使い勝手が良い。


出てきた料理はいつもと変わらず美味しく、違うことと言えば、隣でソフトドリンクを飲んでる同僚が絶望的な顔をしているくらいだ。


「ガヤ、どうしよう……」


何度も繰り返される言葉に、ため息が出る。


「そんなに嫌なら社長の息子だって公表しちゃえば？ そしたらあっという間に女の子集まってくるんじゃない」
「そんなので寄ってくる女なんて御免だね。俺は俺自身を好きになってくれる人がいいの」
「わかるけど、そんな悠長なこと言ってる時間なくない？」
「そうなんだよー！ どうしようガヤ」


隣で騒いでいる男、玉森 裕 太は俺が勤めるアパレルメーカーの御曹司 。
そして御曹司であることは隠し、ショップマネージャーとして働いている。


俺もショップマネージャーだが、元々バイヤー希望。販売員の経験は不可欠だが正社員になって4年、アルバイトの期間を含めるともう7年。移動願いは出しているが、一向に聞き届けられる気配はない。

今はショップマネージャーとして、大変ではあるがやりがいのある日々を送っている。
だが時には厳しく指導しなければならないスタッフ教育と、女性客から言い寄られることが本当に苦手だった。

バイヤーになるには経験と実績が必要で、今の仕事が勉強になることも分かっているが、社会人4年目にもなると色々考えてしまう。



そんな中、マネージャー会議で玉森に出会った。


店舗ごとの報告をぼんやり聞いていると、隣に座っていた玉森がノートに何かを書きだした。

なんだろうとそっと覗いてみると、スイカだかメロンだか分からない謎の物体。


思わず笑いそうになるのを必死で耐えていると、玉森が気付き「ひまだね」と謎の物体に吹き出しを付けた。

ツボに嵌って笑ってしまい周りから冷たい目で見られたが、それがきっかけで玉森と仲良くなった。

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