星月夜 3

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「ミツ？」


ハッとして顔を上げれば、いつの間に風呂からあがったのか玉森が不思議そうな顔でこちらを見ていた。


「あ、たま。あがったんだな」
「何回も声かけてるのに全然返事してくれないからさ。何かあった？」


視線から逃れるように携帯を伏せる。


「ううん、別に。まとめて返信してたらから気付かなったみたいだわ、悪い」
「なんか顔色悪くない？」
「そうか？ ちょっと冷えたかな」
「え、風邪ひかないでよ？ すぐ風呂入って」


はいはいと急かされ脱衣所に向かう。


ちゃんと温まってよ、と念を押され閉められた扉に罪悪感を覚えた。


優しくされるほど嘘をつくことが苦しくなる。
でも言えば更に心配をかけることになるし、もしかすると玉森を危険に晒すことになるかもしれない。


浴槽に身を沈めながら、息を吐く。


「……藤ヶ谷」


息と共に出た名前に驚いて、誰もいないのに慌てて口に手を当てた。


無意識に藤ヶ谷を求めていた自分を戒めるべき、頭を振る。


藤ヶ谷を頼っちゃいけない。
どんなに優しくされても、これ以上近づいちゃいけない。

そう繰り返し思うのに、突っぱねられない自分がいる。


こんな時、自分の甘さが心底嫌になる。

その甘さのせいで大切なものを失ったのに、いつまで経っても直らない。


重くなる思考に浴槽の淵に頭を預け、強張った頭と体を温めるように首まで浸かりじっと天井を見つめる。


見慣れた天井に、いつまでここで世話になるだろうなんてぼんやり思う。


来月も世話になれているのか分からない状態で、今日の事件を考える。


抑制剤を飲んでいる発 情期でもない混血を見破る方法を、俺は知らない。


犯人はどうやって混血だと見破ったのか。


見た目が変わらない混血が人間と違うのは、抑制剤を飲んでいるところ。

普通の生活を送る為に抑制剤は絶対に欠かせない。

抑制剤は紹介されなければ買えず、売るのも買うのも混血だ。信頼関係で成り立っている関係だから、そこから情報が洩れるとは考えにくい。

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