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「で、なんの用?」
ぼんやりしている間にドライヤーは終わったようで、藤ヶ谷が振り返った。
「……この前は、助けてくれてありがとう」
あの時のことを思い出し体がぎゅっと固まったが、礼だけはどうしても言いたかった。
「……覚えてんの?」
藤ヶ谷の声が硬く緊張したように聞こえた気がして、やはり血を吸ってしまったんじゃないかと不安が込み上げる。
「藤ヶ谷が助けに来てくれたことは覚えてるんだけど、それ以外はわからないんだ……悪い」
藤ヶ谷の唇に傷あとがあるのは朝からわかっていた。
どこかにぶつけたのかもしれないという思いと、もしかして俺が噛み付いたんじゃないかという思いが交差する。
だがそれを聞くことも出来ず俯いていると藤ヶ谷が立つ気配がし、そっと視線を上げた。
藤ヶ谷はすぐ傍まで来ると、腰を屈め首筋に顔を近付けた。
「な、なに……?」
こんなに近くで藤ヶ谷の匂いを嗅ぐのは久しぶりで、しかも満月のすぐ後なんて日が悪すぎる。
「甘い匂いがする」
思わず体を引くと藤ヶ谷は体を起こし、感情の見えない目で見降ろしてくる。
「え?」
「ここ数ヶ月ずっと匂ってるけど、それ何なの?」
玉森に血を飲ませてもらってから、まだ二時間くらいしか経っていない。全くとは言うことはないだろうが、そこまで匂わないはずなのに。
どう答えていいのか分からず藤ヶ谷の顔を見つめていると、ぐっと眉間に皺を寄せた。
「……もしかして病気かなんかなの?」
病気かと問われ、そうなのだろうかと思う。
病気と言えば病気なのだろうが、藤ヶ谷に説明することは出来ない。
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くらげ(プロフ) - ももはさん» ももは様ー!どこに進んでいるのか自分でも分からなくなる中わくわくしながら読んでくださっているなんて嬉しすぎます!(;_;)距離を置きたいのにどんどん近付いてしまう展開に複雑な想いを抱えるKさんとFさんの未来と過去を見守って頂ければ嬉しいです(*´ω`*) (2020年3月1日 1時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
ももは(プロフ) - くらげ様ー!ずっとずっと読ませて頂いております。わくわくしています!過去のFKが垣間見れた気が勝手にしてますが、先が分からなすぎてもう、興奮しまくりです☆Kさんがどんなような想いで距離を置こうとしてるいるのか…胸は締め付けられますが…楽しみです! (2020年2月29日 11時) (レス) id: db5af09c34 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - 蜜柑さん» 蜜柑様、初めまして!こんな長々とした話を読んで頂いた上に興奮して頂き、ありがとうございます!しかもTKも大好きと仰って頂けてすごく嬉しくです(〃ω〃)自分で考えた設定ながら難しく煮詰まっておりますが頑張りますのでこれからもお付き合い願えたら幸いです^_^ (2020年2月26日 23時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - 初めまして。フラフラと彷徨っていましたらこちらの作品に出会えました!すごく興味の引く設定にリアルなお話…なんて美味しそうなお話なんだと興奮しております!やはり藤北は外せませんが玉北も大好きなんでありがとうございます!更新楽しみにしています(^^) (2020年2月25日 22時) (レス) id: 8d3125b57e (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - ももはさん» ももは様ー!私こそコメント本当にありがとうございます!お互い相手に対し分からないモヤモヤを募らせていますがここから徐々にバチバチ強めになっていくかと…!謎のサスペンス要素も入ってきて(^^;; 上手く書けるか不安ではありますが楽しんで頂けるよう頑張ります! (2020年1月25日 1時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2020年1月10日 0時