星月夜 2

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汗を流してもスッキリしない気持ちで会場を出て、渉と千賀と食事に向かった。

二階堂と北山はいつも通り部屋で反省会をするのだろうし、玉森と宮田もルームサービスを取るだろう。


三人で食事に行っても話題は北山の事。


「あのスタッフ、辞めさせられたんでしょ？」
「そりゃそうでしょ」
「まあそうだよね。宏光、もう顔を見るのも嫌だろうし」
「警察沙汰にはなってないんでしょ？」
「ミツも知られるの嫌だろうし、事務所的にも変なイメージは付けたくないだろうから」


北山自身とは話していないだろうが、事務所と相手の会社との話し合いはされているようだった。


「ガヤさんが助けたんでしょ？」
「……まあ」
「どんな感じだった？」
「……どんな感じって……」


泣いている北山の姿を思い出し、胸が苦しくなる。


「健永」


窘めるように渉が名前を呼ぶ。


「あ、ごめん。言いたくないよね」
「悪い」
「ううん！ 俺が変なこと聞いたから」


それ以降、会話も盛り上がらず早々にホテルに帰った。

俺たちが泊まるフロアに着くとあの甘い匂いがしないか気になったが、どこからも匂わずほっとしながら部屋に入る。

あのメモを渡した方がいいとは思うが、北山と二人きりになるのが怖くて躊躇っていた。


全部がモヤモヤして、すっきりしたくてバスルームに向かう。

持ってきたバスソルトを入れゆっくり湯船に浸かると、少しだけ気分が上がった気がした。


バスローブを羽織り髪を乾かしていると、ドアをノックする音が聞こえた気がした。

時計を見ると23時30分。

気のせいかと再びドライヤーを当てようとしたが、何となく気になりドアの近くに行き「はい」と言った。

すると外から「俺」と聞こえる。



(北山だ)



ドクンと心臓が鳴った。


どうしようと思うが返事をしてしまった手前、開ける以外の選択肢がない。


ドアを開けると、楽屋を出た時と同じ服装の北山が立っていた。


「夜分遅くにごめん」
「……いいけど」
「ちょっと話したいことあって」


北山が話したいことなんてあの日のこと以外、思い当たらない。


部屋に入れるのは怖かったが立ち話するような内容でもないし、誰かに見られるのも面倒だと思い中に入れた。

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