星月夜 2

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老婆に見送れら外に出ると、濃い霧が洋館の辺りを包みすぐに見えなくなる。

きっと招かれた者しか辿り着けない場所なのだろう。



純血の圧倒的な力をまざまざと感じながら、都内までの道を走る。


あれから藤ヶ谷とは話していない。

今日会いに行くことを伝えようか悩んだが、あんな勝手に喚き散らしておいて何事もなく連絡するなんて俺には出来なかった。それにもし俺と連絡が付かないようなことが起これば、藤ヶ谷は気付いてくれるという自信もあった。

だが薬のことを誰にも言わないで欲しいと、伝えなければならない。

言わないだろうとは思っているが、横尾あたりにでも相談されたら二人に身の危険が及ぶことになる。
ひいてはグループ全体の危機に繋がりかねないし、口止めしとくに越したことはないだろう。


問題は、どう伝えるかだ。

今日話した内容は言えない。何も言わないで、ただ他言するなと言って納得するとは思えない。


どこまで藤ヶ谷に話すかと考え、話せることなんて何もないと思う。

ひとつ話せば、他のことも話さなくてはいけなくなる。


いくら考えても良い考えなんて思いつくはずもなく、最終的に言うなで押し切るしかないと強引な結論に至った。


勢いで行くしかないと、赤信号で止まった時に連絡を入れる。
連絡がなければ一旦家に帰ればいいと思っていたが意外にも、もう家にいると返信があった。


今から行くと伝えると分かったと返ってきたので、送ってもらった住所にナビを設定する。

理由を何も聞かれないことが分かっていると言われているようで、より逃げ場がないような気持ちにさせる。


「……はあ」


高層マンションを見上げながら重たい息を吐き出すと、意を決して部屋番号を押した。

無言で開いた扉を入り、エレベーターに乗る。

念のためサングラスとマスクはしたが、誰にも会わず部屋の前に着いた。


大きく息を吐いてインターフォンを鳴らすとしばらくして鍵が開く音がし、そっとドアを開けると無表情の藤ヶ谷が立っていた。


「入って」


そう言って奥へ行ってしまう藤ヶ谷の背中に、お邪魔しますと声を掛け中に入る。


玄関でも香る藤ヶ谷の匂いに再び息を吐き出し、廊下の先を進む。



まっすぐ進むとリビングがあり、藤ヶ谷はソファに座っていた。

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