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「そう言えば玉森さん、こっちに来るって連絡ありました」
「たまが?」
「他のマネージャーが行くから少しお待たせしますって連絡したら、何かあったのって聞かれて。軽く説明したら、こっちに来るって言われて」
おそらく血が必要だと思ったのだろう。
申し訳ないと思うと同時に、心の底から有り難いと感じる。
「じゃあ僕、ちょっと事務所に電話してきますね」
「あ、うん。わざわざ悪いな」
「そんなお礼なんて! 俺が注意してなきゃいけなかったのに……」
「こんなことになるなんて誰も思わないだろ? だから気にすんなって」
申し訳なさそうなマネージャーに声を掛ける。
マネージャーが悪いわけでも、あのスタッフが悪いわけでもない。
もっと俺が注意してなきゃいけなかったんだ。
「あのさ、俺から何か匂う……?」
ありがとうございますと頭を下げるマネージャーに、ずっと気になっていたことを聞く。
玉森から血をもらってから、もう何時間も経っている。
あのスタッフもいい匂いがすると言っていたし、今この瞬間にも病室中匂いが充満していてもおかしくないはずなのにマネージャーの様子は至って普通だ。
「匂いですか? まあいい匂いがするなとは思いますが、皆さんそうですし」
「……そっか。変なこと聞いてごめんな」
「いえ、じゃあちょっと行ってきますね」
マネージャーが部屋を出ていく音を聞きながら、もしかして……という思いが頭をいっぱいにしていた。
もう何時間も血を飲んでいないはずなのに、不思議と飢餓感がなかった。
気が動転していてそれどころじゃなかったから? とも考えたが、吸血衝動はそういったことで収まるものではない。
となると血を吸ったと考えるのが妥当だ。
だが、あの場に玉森はいなかった。
そしてあの場にいたのは。
(もしかして藤ヶ谷の血を……?)
そんなはずはないという思いと、それしかないという思いが交錯する。
記憶がないことが、こんなに恐ろしいなんて知らなかった。
藤ヶ谷には聞けない。
だが、もし聞かれたらどうすればいい?
上手い言い訳なんてあるはずがない。
血の気が引く感覚に、何とか落ち着こうと深呼吸をする。
自分の粗い息遣いしか聞こえない空間に、より焦ってきて気持ちが悪くなってくる。
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くらげ(プロフ) - mimotaさん» mimotaさんー!明けましておめでとうございます(*≧∀≦*)Fさんsideどきどきして貰えたようで嬉しいです(〃ω〃)そういった内容…何れ出てくるかと思いますので気長にお待ち頂けたら嬉しいです(笑)今年も宜しくお願いします!コメント本当にありがとうございました! (2020年1月6日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
mimota(プロフ) - くらげさん!あけましておめでとうございます☆年始からたくさん更新嬉しいです(*≧∀≦*)この間のFさんsideすごくどきどきしました\(//∇//)\またこの後も、くらげさんが書かれるそういった内容のFKがみれることをひっそりと(笑)期待してます(^^) 今年も応援してます! (2020年1月6日 11時) (レス) id: e3aff967f8 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - nanacoさん» nanacoさんー!今作も読んで頂けているだけで嬉しいのに更に嬉しすぎるお言葉…!本当にありがとうございます!!。゚(゚´ω`゚)゚。想像以上に吸血鬼設定に苦戦しておりますがワクワクして貰えるよう頑張ります!コメント本当にありがとうございました(*´ω`*) (2020年1月6日 1時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - くらげさん、前作に続きこちらも愛読させて頂いております(//∇//) 吸血鬼設定、とってもワクワクします♪ 北玉も藤北も、くらげさんの書く世界観の中で読めるのが嬉しくて仕方ないです(><) (2020年1月6日 0時) (レス) id: d77fcd2775 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - ririkaさん» ririka様ー!読んで下さっただけでなく嬉しいお言葉まで本当にありがとうございます!!(〃ω〃)ここからTさんFさん、どんどん巻き込まれていきそれによってまた色んな出来事が起こる予定ですので楽しんで貰えるよう頑張ります!応援ありがとうございます(*≧∀≦*) (2019年12月19日 23時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2019年11月19日 0時