星月夜 1

4 ページ4

　
　
　
「知らなかったら知らなかったでよかっただろうけど、もう知っちゃったからさ。それに何かあった時に、助けてあげられるかもしんないし」
「……たま」


こんな奇想天外な話も茶化さず聞き、俺を気遣ってくれる優しさに涙腺が緩くなりかけた時、玉森が「あのさ」と真面目なトーンで言った。


「一つだけ聞きたいんだけど」
「なに？」
「俺たちの血って吸ったことある？」
「……お前らの血を勝手に吸ったりしねーよ」


ほっとした顔をする玉森に、メンバーへの想いを感じ少し胸が熱くなった。

もっと詳しく知りたいと言われ、発 情期は人によって周期が違うこと、満月になると症状が強くなること、記憶を消せる以外に身体的能力が上がること、太陽の光や十字架などは効かないことなどを話した。


「てことはミツは今、発 情期ってこと？」
「まあ」
「それってどれくらい続くの？」
「んー、症状が重いのは……半年くらいかなぁ」
「そんなに？」
「実際は一年なんだけど、その間の数ヶ月が特にツライんだよな」
「ツライって具体的にどうツライの？」
「血が欲しくなるのと、あとは……ヤ りたくなる」
「そうなの？」
「吸血鬼って子孫を残すことに強い執念があんのか、体が勝手にそうなんだわ」
「え、ミツ大丈夫？ やらかしてないよね？」


向けられる疑惑の目に、眉間に皺を寄せじとりと見る。


「さすがに俺だって自分の立場は分かってる。だから血だけもらったんじゃん」
「それって彼女とか作った方が楽なんじゃない？」
「彼女に実は吸血鬼なんですとか言えるか？ 無理だろ」
「確かに」


んー、と腕組みしながら何かを考え始めたがすぐに両手を上げた。


「考えんの無理―！ まあ、なんとかなるっしょ」
「たま見てると、ほんとに何とかなる気がしてくるわ」
「でしょ？」


自信満々に言う玉森に癒されて、少しだけ楽になった気がした。


「あのさ、他のメンバーには」
「わかってる、言わないから」


その言葉に安堵して、ありがとうと言った。

玉森は普段と何ら変わらない様子でじゃあねー、と帰って行った。

それが俺に気を遣わせない為なのかどうかは分からないが、改めて玉森で良かったと思う。


「ちゃんとやんねーと」


さっさと風呂に入りベッドに転がるとそう気合を入れ、久しぶりに重たくなる瞼にゆっくり目を閉じた。

5→←3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す