星月夜 1

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「……ここから吸いたい？」


玉森は自分の首筋を指さした。俺は首を横に振る。


吸いたいけど吸いたくない。玉森は大切な仲間だから。



……もう同じことは繰り返さない。



思い出に何百回目になるかも分からない胸の痛みを覚え、気分が沈む。


「あれ？ もういいの？」


吸う力が弱くなったのか玉森が言うから、また首を横に振った。


「ふふ、なんか動物を餌付けしてるみたい」


ちゅっちゅっと吸っていると聞こえた声に視線だけ上げる。


「ミツ最近小動物感が増してるし、余計にそう見えるのかも」


どう答えていいのか分からずそのまま黙っていると、夢中で吸っちゃってんじゃんと笑った。


「痛くねーの？」


吸い終えて、傷口を舐めながら問いかける。

自分がやっておいてこんなことを聞くのもどうかと思うが、傷口はそこそこ深い。吸い過ぎて皮膚はふやけているし、見るからに痛そうだ。


「んー、痛いんだけどずっと吸われてると慣れてくるって言うか」
「そうなの？」
「だから気にしなくていいよ」


完全に消えた傷を見つめてから玉森に視線をやると、そんなことを言われた。

気を遣わせていると思うが、俺は頷くしかない。


「……ありがとな」
「お腹いっぱいになったなら寝よっか」


俺の言葉に優しい返事をくれる。

包まれるように優しさに瞼が重くなりつつ、玉森に付いて寝室に向かう。


いつもの様にベッドの下に布団を敷き、潜り込んだ。


「ミツ、明日の朝は俺が寝てる間に勝手に吸ってくれていいから」
「いやいや、絶対起きるじゃん」
「一回は起きるだろうけど多分、慣れて寝られると思うから。その為に早く起きんの嫌だし」
「えー……まあ、いいけどさぁ」


吸わせてもらえれば何でもいいが、勝手に吸うのはさすがに気が引ける。

だがその為に起きたくないと言われれば申し訳ない気もして、玉森がいいならと了承した。


「じゃあ、それでー。おやすみー」


そう言うと聞きもせずに部屋の電気を消され、こんな時でもらしさ全開の様子に笑う。

変わらず接してもらえることが、こんなに嬉しいなんて知らなかった。


玉森に気を遣わせていることは分かっているが、遠慮する方が迷惑だと教えられ確かにそうだと思った。

俺の玉森の立場でも、きっと同じことをしただろう。



玉森の傍は息がしやすい。


微睡んできた思考に瞼を閉じると、すぐに眠りの淵に落ちて行った。

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