星月夜 1

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日中は極限状態で味わうまでいかなかったが、口の中に広がる甘さは先日のスタッフに比べ格段に美味い。

今までじっくり味わうなんてことがなかったから、人によって味って違うんだなーと思いながら吸い付いていると、やはり五分くらいで腹が膨れた。


「あれ、もういいの？」
「うん、なんでかわかんないけどたまのだとすぐ腹がいっぱいになる」
「それ不味いってこと？」


不機嫌そうに眉間に皺を寄せるのに、慌てて首を横に振る。


「え、いや、そんなことないよ。美味い」
「……ほんとに？」
「ほんとほんと！」
「まあいいや。腕ちょっと貸して」


怪しんでいる雰囲気はあったが、そのまま腕を取られ手首を嗅がれる。


「……うん、さっきより匂わない」
「へ？」
「もしかしてお腹空くと匂いが強くなるのかなと思って、試してみたんだよね」
「あー、そう……なの？」
「ミツは匂わないみたいだからわかんないと思うけど、この匂い結構ヤバいよ。ちゃんと抑えないと大変なことになると思う」
「……うん」


何となく気まずくて口をもごつかせていると、だからと玉森は言った。


「俺の血、吸っていーよ」
「え？」
「だーかーら、終わるまで俺の血飲んでいいよって」
「……まじ？」
「だってしょうがないじゃん。あんな体調悪くなるんじゃさぁ」
「……だよな、悪い……」
「そうじゃなくて、メンバーだったら助けるのが当たり前でしょってこと」


最年長なのに迷惑かけて申し訳ないと気落ちしていたが、聞こえた言葉にはっと顔を上げる。


「助けられるのが俺しかいないんだったら、やるっきゃないでしょ」
「……たま……」


玉森の成長と優しさに、ちょっと泣きそうになりながら見つめると「何その顔」と笑われた。


「仕事の都合とかで日中とか会えないかもしれないけど、夜でも朝でも連絡して」
「でもそれは……」
「俺への迷惑より仕事で迷惑かける方が大問題だから」


その通りだと思った。

申し訳ないが玉森しか頼ることが出来ない今、安全な方法はそれしかない。


「……ありがとな」
「どういたしまして」

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