星月夜 1

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「なんかミツ赤ちゃんみたい」
「んー？」


少しでも指を離すのが惜しくて咥えたまま応えると、また笑い声が聞こえた。


「指ちゅっちゅして、赤ちゃんが指しゃぶりしてるみたいじゃん」


たまが痛くしないでって言ったからじゃんと思うが、恵んでもらっている立場なので黙ったまま指を吸い続ける。


「痛いの嫌だったけど、笑えるからいいよ」
「んー……」


こっちは笑えねーんだけど、と思いつつ今の俺にとってたまは神様みたいなものだからここも唸るだけに止めた。


「指離さないじゃん、どんだけ腹空いてんの」


腹が空いてると言われ、そうなのかと思った。

最近、腹が空いたと思って食べてもなんだか満たされないし前ほど美味く感じなかった。歳か？ と思っていたが食べたいものが違ったということか。


自分が本当のバケモノになったような気がして、口から指を離す。


「あ、もういいの？」
「なんか大丈夫そう」


気分が下がって離したが、言われてみたら体の熱や喉の渇きも治まっている。


「そんなに吸うわけじゃないんだね」
「あ、待って。傷消さないと」


いつもはもっと吸っていたが、もしかしてそんなに必要なかったのだろうか。
疑問は湧いたが、それより玉森の傷を治すことの方が先決だ。


白い指を取り、傷痕に舌を這わせて何度か舐める。


すると先程まで赤く切れていた皮膚が、すっかりいつも通りの滑らかさを取り戻した。


「すご」
「……引いたか？」


こんなの人間じゃないよなと力を使う度に思っていたが、メンバーを前にするとより突き付けられる。


「引くわけないじゃん、なに言ってんの」


玉森はそう言ってから、パンツのポケットに入れていたであろう携帯を取り出し何かを打ち込んだ。

おそらく宮田か誰かから、そろそろ戻って来いと連絡があったのだろう。


「元気になったなら行くよ」
「おー」


空き部屋を出て控室に戻る途中、玉森が尋ねる。


「ミツ、今日これで終わり？」
「ああ」
「じゃあ、そのままミツんち行くわ」
「わかった」


また色々聞かれるんだろうと思い、素直に頷いた。

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