Cascade 5

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「……話したのにため息つくなんて酷くない？」
「酷いのは太輔だろ？ 自覚する前もまあまあ酷いけど、自覚した途端なにも言わずにキスするなんて犯罪だよ」
「…………犯罪」


犯罪という言葉に落ち込んでしまったようだが、今言いたいのはそこじゃない。


「もちろんそれは大問題なんだけど、それよりも問題なのがミツに聞かれた時に何も答えなかったこと。それでミツを傷つけて、そりゃ裕太も怒るよ」
「……なんでたまが怒るの？」


嫉妬が滲む低い声。


「裕太は太輔が自分勝手にミツを傷つけたから怒ってんの」
「自分勝手って」
「そうでしょ？ キスした癖に何も言わないとか卑怯すぎるよ。ミツはあんなに頑張ってたじゃん。それなのに自分は何も言わずに手に入れようなんて、虫が良すぎるんじゃない？」


キツいことを言っているのは分かっていたが、多分これくらい言わないと太輔には伝わらない。


「ミツは太輔が今まで付き合ってきた女の子たちとは違うよ。他に変わりがいないって思うなら、ちゃんと口に出して気持ちを伝えなきゃ」


太輔は俺を見つめていたが、話し終わるとふっと視線を下げた。


多分まだ決心がつかないのだろう。だが恐らくそんなに悠長している時間はない。


「他の人に取られちゃってもいいの？」
「……え？」
「もたもたしてたら本当に取られちゃうよ？ 太輔はそれでいいの？」
「………………よく、ない」


小さな声だったが、はっきりと聞こえた。


「だったらさっさと言っちゃいな」
「え、そんな急に」
「早くしないと本当に取り返しがつかなくなっちゃうかもしれないよ」


焦る太輔に真面目な顔で言う。

ミツの様子から多分、残された日数は多くないような気がした。


ここで動かなかったら、おそらくミツは太輔のものにはならない。


「……わかった」


太輔はそう短く答えた。

本当に動くのかは分からない。


自分に出来ることはやったつもりだ。


だが所詮、俺は第三者。

あとは太輔に委ねるしかない。



祈る気持ちで俯いたままの親友を見つめた。

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