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北山は首元まで真っ赤に染めながら、肩で息をしている。
「はぁ……は…………急に……、なんだよ……っ」
「北山から他の男の匂いがするから、消そうと思って」
「……っ、だからってこんないきなり……」
「いきなりじゃなかったらいいの?」
「……そうじゃなくて……もっとゆっくり……」
小さくなる語尾に俯いてしまった顔を上げさせると、涙を堪えるように唇を噛みしめた北山がいた。
「北山?」
即すように名前を呼ぶと躊躇うように何度か口を動かしたあと、ゆっくり言葉を紡いだ。
「……ずっとずっと藤ヶ谷が好きだったんだ……。……だからっ……もっとゆっくり……実感させて欲しい……」
北山の手がぎゅっと強く握り込まれるのと同時に、自分の胸も握り込まれたように苦しくなった。
「北山っ!」
愛しさが爆発してどうしようもなくなって、名前を呼んでその体を抱きしめた。
「おわっ! え、なに」
「もうっ、そんな風に言われたら我慢するしかないじゃん」
「ん?」
「ほんとは今すぐにでも俺のものにしたいけど、北山がそう言うならゆっくり進んでいく。だから、ちゃんと俺に愛されてるって実感して?」
「あ、や、う、ううん」
北山は真っ赤な顔で、分かったのか分からないのかわからない返事をした。
いつの間にか落ちていた帽子と一緒に、疲れたとへたり込んでしまった北山をソファに座らせた。
襟ぐりの広いTシャツからは鎖骨どころかずれて左の肩まで見えてしまっていて、今の俺にははっきり言って目の毒だ。
しかし、目の毒以上に問題なことがある。
「……ところで、その服って誰の?」
俺は北山の隣に座り、問いかけた。
部屋に来た時からずっと気になっていた、全くサイズの合っていない服。
「……大倉の」
「は?!」
「え、なに?」
「なに? じゃないだろ。え? 大倉くんち行ってたの?」
「お、おぅ」
「俺の誕生日に?」
「だって先に誘われたし」
「恋人の誕生日が最優先でしょ!」
「……っ、恋人って、まだそうじゃなかったし……っ」
「そうだとしても! え、なにもなかったよね?」
「………………ねーよ」
そう聞くと北山は、たっぷり間を空けてから小さな小さな声で答えた。
「ちょっと! 今の間なに?! 絶対なんかあったじゃん!」
「なんもないって言ってんだろ! うるせーんだよっ」
俺が大きな声を上げると、北山も顔を真っ赤にしてムキになって言い返してくる。
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ちび(プロフ) - ありがとうございます、実はまた続編読みたいな、思ってました、お知らせくるの待ってますね⚪︎ (2023年3月21日 21時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - ちびさん» ですし何かキリのいい数字になった時に続編を書くかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。この度はこんな長い話を読んで頂き、メッセージを頂き本当にありがとうございました。また読みにきてくださったら嬉しいです(*´-`) (2023年3月21日 21時) (レス) id: 4781cdc11c (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - なんかラブFKめっちゃ良いですよね、楽屋の話探してて見つけました、楽屋てちょっと覗いで見たいですよね💓で、きっとめっちゃうるさそうだし笑 FKを冷やかす弟組とか大好きです⚪︎ (2023年3月21日 21時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - めっちゃ引き込まれました、倉北ベタベタしてますもんね、ヤキモチ焼きFは私もよく妄想してます、倉優しいし関西弁で捲し立てる感じめっちゃ笑いましたありがとうです、勇気ないF可愛すぎましたわ、Kも早く言ってよ、てね (2023年3月21日 21時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - ちびさん» 途中どうやって持っていこうかと悩みましたが最後の最後で動いてくれて良かったです。この話は色んな人が関わってくる話にしたので大変な時もありましたが沢山の方に読んで頂ける作品になったので嬉しかったです。ラブラブFKは書いてて笑ってしまいましたが楽しかった (2023年3月21日 21時) (レス) id: 4781cdc11c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2019年6月27日 23時