228 F ページ28
テーブルの上には手が付けられていない料理が並んでいる。
シャンパンもケーキも冷蔵庫に入ったまま、きっと味を知ることなく捨ててしまうだろう。
0時13分。誕生日は終わってしまった。
有り難いことに日付が変わった瞬間から携帯は鳴り続けたが、北山からの連絡は一度もない。
前日、俺から送ったメッセージは既読になった。だが行くとも行かないとも返信はなかった。
来てくれないかもしれないと思った。だがもしかしたら、という気持ちもあった。
それが打ち砕かれた今、立ち上がる気力も起きない。
なんでもっと早く好きだって言わなかったんだろう。
渉に言われた時、すぐに行動していれば間に合ったかもしれないのに。
後悔で胸が押し潰されそうになる。
料理なんて出来ないから、惣菜を山ほど買ってきた。
来ないかもしれないと思いながら、それでも北山を想って選ぶのは楽しかった。
テーブルの上は茶色のものが多く、彩りは決して良いとは言えない。
当然一人分の量ではないし、気分的にも食べられそうにない。
「これも生ごみか……」
東京でのコンサートが終えた次の日から、舞台をやっていたとき食欲がない俺に北山が教えてくれた店に行った。
もちろん勧めてくれた料理も食べたかったが、それ以上にその店で北山が何を食べているのかを知りたかった。
どの店でも、いつも北山が何を食べているのか聞いて同じものを食べた。
本人には内緒にしてくれと頼んでおいたからバレてはいないだろうが、もしバレでもしたら顔から火が出るくらい恥ずかしい。
北山が俺を知とうとしてくれたように、俺も北山のことが知りたかった。
教えてくれた料理は全部美味しかったし、北山が好きだと思えば食欲がなくても食べられた。
北山の好きな味を俺なりに考えて、惣菜も好みの味を選んだつもりだ。
だがそれも食べてもらえなければ意味がない。
報われない想いが、こんなにも辛いものだとは知らなかった。
ドラマや映画で何度も切ない恋を演じてきたが、それはただのお芝居で所詮絵空事だった。
本当に息が出来なくなるなんて知らなかった。
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ちび(プロフ) - ありがとうございます、実はまた続編読みたいな、思ってました、お知らせくるの待ってますね⚪︎ (2023年3月21日 21時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - ちびさん» ですし何かキリのいい数字になった時に続編を書くかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。この度はこんな長い話を読んで頂き、メッセージを頂き本当にありがとうございました。また読みにきてくださったら嬉しいです(*´-`) (2023年3月21日 21時) (レス) id: 4781cdc11c (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - なんかラブFKめっちゃ良いですよね、楽屋の話探してて見つけました、楽屋てちょっと覗いで見たいですよね💓で、きっとめっちゃうるさそうだし笑 FKを冷やかす弟組とか大好きです⚪︎ (2023年3月21日 21時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - めっちゃ引き込まれました、倉北ベタベタしてますもんね、ヤキモチ焼きFは私もよく妄想してます、倉優しいし関西弁で捲し立てる感じめっちゃ笑いましたありがとうです、勇気ないF可愛すぎましたわ、Kも早く言ってよ、てね (2023年3月21日 21時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - ちびさん» 途中どうやって持っていこうかと悩みましたが最後の最後で動いてくれて良かったです。この話は色んな人が関わってくる話にしたので大変な時もありましたが沢山の方に読んで頂ける作品になったので嬉しかったです。ラブラブFKは書いてて笑ってしまいましたが楽しかった (2023年3月21日 21時) (レス) id: 4781cdc11c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2019年6月27日 23時