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「ちょっと足が長いからって馬鹿にすんなし」
「長いのは足だけじゃないで」
「腹立つー!」


口を大きく開けて大倉が笑う。


この笑顔と笑い声に何度助けてもらっただろう。

大倉が居てくれたから俺は今ここにいられる。


大倉と一緒にいると何も不安になることもないし、ずっと笑っていられる。

それは幸せなことではないだろうか。


「髪乾かさんと風邪引くやろ」


そう思いながら見ていたら、急に大倉がソファを立ち上がった。
不思議に思っていると俺も風呂入って来ると行ってしまい、よく分からなくて首を傾げる。


考えても仕方がないかと、ドライヤーで髪を乾かしてから再びソファに腰を下ろした。


大倉がいい奴なのはもちろん分かっている。

カッコいいし、優しいし、おそらく大事にしてくれるだろう。


藤ヶ谷を忘れさせてくれるのは大倉しかいない気がしている。

それなのに踏ん切りがつかないのは、最近の藤ヶ谷の態度に期待してしまっているからだろうか。


全く期待していないかと言われたら嘘だ。

だがそれを確かめる勇気がない。

それに確かめるということは、大倉を裏切ることになる気がした。


藤ヶ谷に振られて、大倉にも愛想を尽かされるのは嫌だと思う。


結局、俺は狡くて弱い。



「あれ、まだ飲んでなかったん?」


声がして大倉が風呂から上がったことに気が付いた。


濡れた髪をバスタオルで拭く姿はカッコ良く、当たり前だが随分大人っぽくなったと思う。


「勝手に人んちの冷蔵庫、開けられねーだろ」
「宏光にも遠慮するって心があったんや」
「失礼な、あるわ!」
「今度からは勝手に飲んでいいから」


そう言って冷蔵庫から冷えた缶ビールを手渡してくれる。

俺の好きな銘柄。


大倉の好きはあちこちに散りばめられている。

それに気が付く度、嬉しいような苦しいような気持ちになる。


きっと藤ヶ谷を好きじゃなければ、大倉のことを好きになっていただろう。

だがそんなたらればなんて意味がないくらい、俺の心はずっと藤ヶ谷だけだった。


藤ヶ谷を好きでいるのをやめたいと思ったことは数知れない。
嬉しかったことより、辛かったことの方が断然多いだろう。

それでも俺の中で藤ヶ谷が輝き続けることが、一種の誇りのようなものにもなっていた。


藤ヶ谷を好きなのが当たり前だったから、そうじゃなくなった自分が想像出来ない。


大倉を未だ受け入れないのは、変化を恐れているだけなのだろうか。

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ちび(プロフ) - ありがとうございます、実はまた続編読みたいな、思ってました、お知らせくるの待ってますね⚪︎ (2023年3月21日 21時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - ちびさん» ですし何かキリのいい数字になった時に続編を書くかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。この度はこんな長い話を読んで頂き、メッセージを頂き本当にありがとうございました。また読みにきてくださったら嬉しいです(*´-`) (2023年3月21日 21時) (レス) id: 4781cdc11c (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - なんかラブFKめっちゃ良いですよね、楽屋の話探してて見つけました、楽屋てちょっと覗いで見たいですよね💓で、きっとめっちゃうるさそうだし笑 FKを冷やかす弟組とか大好きです⚪︎ (2023年3月21日 21時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - めっちゃ引き込まれました、倉北ベタベタしてますもんね、ヤキモチ焼きFは私もよく妄想してます、倉優しいし関西弁で捲し立てる感じめっちゃ笑いましたありがとうです、勇気ないF可愛すぎましたわ、Kも早く言ってよ、てね (2023年3月21日 21時) (レス) id: ff59837987 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - ちびさん» 途中どうやって持っていこうかと悩みましたが最後の最後で動いてくれて良かったです。この話は色んな人が関わってくる話にしたので大変な時もありましたが沢山の方に読んで頂ける作品になったので嬉しかったです。ラブラブFKは書いてて笑ってしまいましたが楽しかった (2023年3月21日 21時) (レス) id: 4781cdc11c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2019年6月27日 23時

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