197 ページ47
どうしたらいいのかわからなくて、胸を掻き毟る想いを少しでも落ち着けたくて行った喫煙所に会いたくて会いたくなかった人がいた。
「……よお」
突っ立っている俺に気まずそうに声を掛ける北山はシャワーを浴びたようで、ふわふわの髪が目元を隠している。
言う言葉が見つからなくて無言で喫煙所に入ると、少し離れた場所に腰掛け加熱式タバコを取り出した。
「……お前、体調悪い?」
「え?」
会話が生まれるなんて思っていなかったから、思わず聞き返してしまった。
「今も顔色悪いし、コンサート中も一瞬動き止まった時あったろ? だから体調悪いのかなって」
あんな一瞬、動きが止まったことに北山は気付いてくれた。
だがきっと俺だって仕事中なら北山のどんな小さな変化にも気付けるだろう。そうやって俺たちは今までずっとやってきた。
それなのに今、そんな当たり前のことが堪らなく嬉しい。
「ああ、うん……悪い」
嬉しいのにどう答えていいのか分からなくて、曖昧な返事になってしまう。
「そんなに辛いのか?」
少し声が詰まってしまった。
北山は俺が酷く体調が悪いと思ったようで、下から覗き込むように見つめてくる。
小さな顔。
前髪の奥から見える大きな目が、真っすぐ俺を見上げる。
北山の目に俺が映っている。
あの香水の匂いはしない。するのはシャンプーの香りだけ。
触れた頬はサラッとしていた。
470人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くらげ(プロフ) - makoanjyuさん» makoanjyuさん、いつもありがとうございます!Fさん言葉にはしない癖に無意識に行動しちゃうからいつも大変な事に(^_^;)Kさんに否定されTさんに嫉妬して心の嵐に翻弄されるFさんとT、Y、Oさん其々の想いがどう交錯していくのか移行後も見届けてもらえたら嬉しいです! (2019年6月26日 1時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
makoanjyu(プロフ) - いきなりKさんにキスしちゃったFさん。相手に否定されて初めて味わう嫉妬と独占欲!大好物デス(//∇//)TさんのKさんに対する甘やかす様な抱擁を見てしまったFさん。何で見に行っちゃうかなぁ。そしてTさん良い仕事しますね♪もっと暴れてください♪(´ε` ) (2019年6月25日 23時) (レス) id: 7bd3afd279 (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - さゆりさん» さゆりさん、初めまして!仕事後のご褒美にしていますなんて言って頂き私の方がご褒美を貰った気持ちです。゚(゚´ω`゚)゚。これからもドキドキしてもらえるよう頑張りますので移行後もお付き合い願えれば嬉しいです(*´ω`*)コメント本当にありがとうございました! (2019年6月25日 22時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
さゆり(プロフ) - 初めてコメントさせて頂きます。くらげさんのこのお話が凄く好きで、毎回更新されていると勝手に仕事後のご褒美にしています。笑 Fさんやっと気付いて毎回切なくもドキドキ読ませていただいてます。くらげさんの描くお2人がとても繊細で大好きです^_^ (2019年6月25日 15時) (レス) id: 6b1f7122fc (このIDを非表示/違反報告)
くらげ(プロフ) - makoanjyuさん» makoanjyuさん、こちらこそいつもご丁寧にありがとうございます!香水を買ってから長かったですがやっとここまで来たかと…!少しずつ変化していく2人を細かく書きたかったのでそう言って頂けて本当に嬉しいです(;ω;)次の更新でガッと動くので楽しみにして貰えたら! (2019年6月22日 2時) (レス) id: b17685444c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:くらげ | 作成日時:2019年5月17日 0時