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海の、ぬるい風が、磯の塩気のある匂いとともに、湿気のある重い空気を運んでいるのが分かる。
昼間の焼け付く太陽の熱さとは違った、じっとりと全身から汗を引き出すような、蒸れた風が、その中に天気の変わる気配をも含んでいたようで。
最初、離れた場所から、遠慮がちに聞こえていた、ポツポツと言う音は、建物の周りを雨のカーテンでくるんでしまうように、あっという間に大量の水を空から撒き散らし始めた。
「…雨が…俺を隠してくれる…」
そう、口に出して言ってしまって、から。
俺は今、何から隠れたいんだろう？と思った。
旭から？
旭は俺がいないことに気が付いただろうか？
心配している？
捜している？
まるで、小さな時にした、かくれんぼのように、俺は、誰かが俺を捜しに来るのを、待っているんだろうか？
そうだとすれば、俺はきっと、そんなことを期待している自分を、隠してしまいたいんだ。
この、水と、漆黒の闇に。
目を瞑れば、溶けてしまえるだろうか？
『……馬鹿みたいに諦めないの、誠しかいないって、思ったから…』
奏の言葉がぼんやりと頭に浮かぶ。
俺も、しつこいのは、俺の数少ない長所の、ひとつだと思ってたよ。
今回も、いつもと同じ様に、頑張れると思ってた。
こんな風に、ぽきんと思いっきり簡単に、自分の心が折れてしまうなんて、思いもよらなくて。
逃げて、帰るなんて、きっと、うちの母ちゃんにはぶん殴られる。
両手で目を覆い、そんなことを想像して、少し笑った。
そして、旭の母ちゃんを思い出した。
旭と、旭の母ちゃんの前で、『朝日荘』で働く事を懇願したときに、自分が言った事を思い出した。
『俺はいやいや責任取ってるつもりはないです！ちゃんと楽しいし、目標も持って頑張ってるんです！だから、ダメって言わないで下さい！』
俺は、何の為に、働いてたんだよ？
自分の満足の為？
違うだろ？
自分がしたことの、責任を取る為だ。
旭が、俺にどんな態度を取ったとしても、俺が、ここにいる理由は別にあるんだ。
覆っていた手を、ゆっくりと、離す。
何も見えないほどの暗闇が、雨の跳ね返りで、ぼんやりと白く浮かんで見えた。
「…馬鹿みたいに、諦めないのって、長所って言えるのかな…」
ベンチから起き上がって、外を眺めると、雨は空も海も一緒くたに一つの色に纏まった世界を作り出していた。
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wakano(プロフ) - あおみさん» 本当に長〜くなりそうです。世の中ぱっぱとどうにかなってしまう話が、多過ぎるな〜と（私を含め）。なので、時代に逆行しなかなか発展しない話しにしようと、思いまして。こんだけ書いて、やっとドキドキにもってこれました。この続きも、一緒に胸きゅんしましょう！ (2013年9月29日 23時) (
レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - ＊華＊さん» もうね、この話は意地でも、ゆっくりと書こうと思います。じんわり、じんわり。多分話的には、半分済んだ位なので、私のスピードで考えると、どうしても冬は越えるでしょう（笑）覚悟してやってください！次もまた遊びに来てやってくださいね！ (2013年9月29日 22時) (レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
あおみ(プロフ) - 冬になってもこの二人を見守れるんですね。嬉しいです。長〜く読ませて貰えるんですから(^^)誠君のドキドキが私にも伝染して胸キュン（死語ですか？）です。あっちの二人の諍いが誠君の気持ちを変化させた原因ですからね、気になりますね。 (2013年9月29日 10時) (レス) id: 65e0db38aa (このIDを非表示/違反報告)
＊華＊(プロフ) - ふふふ、ゆっくりゆっくり変わっていく誠を楽しんでます（はぁと）旭は色々気付いてるからそれも楽しいです☆渉達はどうなるのかな。勿論季節が冬になってもついていきまーすっ♪ (2013年9月29日 9時) (携帯から) (レス) id: 27604c18e7 (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - ＊華＊さん» はい、このいけず〜な展開が書きたくて、書きたくて、長々と雷のエピソードを入れたんです。良い損なった何かを、朝日が飲み込む代わりに、誠が少しだけ、旭に対して変わってくれるかな〜？と思ってます。頑張れ、旭！ (2013年9月8日 22時) (レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：wakano | 作者ホームページ：http://wakano.blog.fc2.com/
作成日時：2012年8月3日 0時
