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「どうして、呑んでないの？…こんなに残ってるのに…」
拾い上げて、目の前に差し出した。
「何で、何にも言ってくれなかったんだよ！！」
こんなにも、涙は大きく、いきなり溢れ出すものなのかと、目の前にいるはずのｼｮｳくんを、まともに見れない程、それは俺を濡らした。
ｼｮｳくんはそんな俺を、我が儘に駄々をこねている、子供をあやすように言った。
「…きみを無くしてしまうのに？」
いつもの、俺を諭すその口調が、変わらない抑揚で。
俺は平然と冗談のように話し始めるｼｮｳくんを、『怖い』と思った。
「…冬の頃、寝れないほどの頭痛が続いてたよね。…ｻﾄｼくんには言わなくても分かるか…。病院に行けって言ったのもｻﾄｼくんだもんな」
口元に笑みさえ浮かべる、その表情が、もう何もかもを悟ってしまっているように見える。
「精密検査してさ…、MRI撮ってさ…。検査の結果待ってさ…。どんどん、どんどん、怖くなるわけ。早く、なんでも無いって言って欲しくてさ…」
―――『腫瘍があります。組織検査など詳しい事をして見なければ、確かな事は言えませんが、右の海馬付近に影があるために、もし、手術となれば、記憶障害を伴う危険性は、かなりの確率であるでしょう。とりあえず、投薬で経過を見て……。
「待った挙句が、告知だよ…。本当に気が狂いそうだった」
俺が差し出した、まだ一錠も飲まれていない、錠剤の束をそっと受け取る。
「…俺はね、知ってたよ。ﾏﾂｼﾞｭﾝのこと。でも、きみは俺の傍にいてくれることを決めてくれてたね。全部を捨てて、俺を選んだ事、分かってたんだ。俺は何もかも知らん振りで、きみのその決意に乗っかろうとしてたんだよ。だって…もし、きみが俺でなくﾏﾂｼﾞｭﾝを選んだとしても、きみはその為にきっと色んな物を捨てる。どちらを選んでも、どこかできみは傷付く。…そう思ったんだ。でもね…」
それをまた一枚ずつ、ゴミ箱の中に落としていく。
「…俺が。俺自身が、ｻﾄｼくんを忘れてしまうんだよ」
・
―――もし、俺がいなくなれば、ｻﾄｼくんはどうするだろう…。
何もかも、捨てさせて。
そして、俺が居なくなってしまったら？
・
「…腫瘍が大きくなれば、海馬を圧迫し、損傷する。手術をすれば、やっぱり損傷を伴う事は免れないってさ。…海馬ってとこは、人間の記憶をつかさどってる所で、そこが壊れると、新しい記憶のストックが出来なくなるんだって」
ラッキーアイテム
革ベルト
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wakano(プロフ) - あおみさん» ドキドキ私もしてます。どうなるんだろう？（笑）大まかには決めてるんですが、一つだけ。死人は出ません！ (2012年9月13日 12時) (
レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
あおみ(プロフ) - そんな…サトシくんはどうなっちゃうんですか！次回の更新を震えて待ちます。ドキドキします… (2012年9月13日 1時) (レス) id: e8e0a50d24 (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - あおみさん» のんびりと書いていたので、凄く辛い時期が長かったですよね（笑）大変お待たせいたしました。まだもう少しお話自体は続きますが、二人の気持ちが伝わりあうのはもう目の前です！頑張りま〜す！ (2012年9月8日 11時) (レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
あおみ(プロフ) - アップ直後から何度も読み返し、ジュンくんとサトシくんとショウくんそれぞれの心を思って切なく、また温かな気持ちになります。素敵なお話、ありがとうございます！毎回毎回涙を堪えるのが辛いので外では読まないようにしてました。続き、震えて待ちます！ (2012年9月8日 8時) (レス) id: e8e0a50d24 (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - ＊華＊さん» やっと意志の疎通が出来そうなとこまで来ました。ここまできたら一気書きでしょう！『はろまい』返上で書き上げます！一話ずつ出来次第アップするので、お暇だったら覗いてみてください（ぺこり） (2012年9月8日 8時) (レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：wakano | 作者ホームページ：http://wakano.blog.fc2.com/
作成日時：2012年7月12日 12時
